2015年05月13日 10:21 弁護士ドットコム
サッポロビールのヒット商品「極ZERO(ゴクゼロ)」をめぐる騒動は、まだ続きそうだ。サッポロビールは独自の検証にもとづいて「極ZEROは第3のビールだ」と主張して、酒税約115億円の返還を求めていたが、国税当局は4月下旬、サッポロに対して「返還しない」という内容の通知をおこなったのだ。
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極ZEROは2013年に「第3のビール」として発売されて、大ヒットした商品。ところが、国税当局から「第3のビールにあたらない可能性がある」という指摘を受け、サッポロは昨年5月製造分でいったん販売を中止。昨年7月から税率の高い「発泡酒」として再発売した。
サッポロは、第3のビールとして販売した分について、追加の酒税115億円と延滞税1億円を自主的に納めた。その後、社内の独自調査にもとづいて「極ZEROが第3のビールである」と判断し、今年1月に、酒税の返還を求めていた。
今後の対応について、サッポロは、外部専門家を交えながら社内で検討しているということだ。今回、どうして酒税の返還請求が認められなかったのだろうか。税にくわしい大和弘幸弁護士に聞いた。
「報道によれば、国税当局は、酒税を返還しない理由について、『個別の案件はコメントできない』としています。
また、サッポロ側も昨年6月の段階で、『原料となる発泡酒の製造方法で国税当局から照会を受けている。それ以上は製品開発上の営業秘密のため説明できない』としています。
そのため、具体的に何が問題なのかは、外部からはっきりとわかりません」
大和弁護士はこのように断ったうえで、次のように説明する。
「おそらく、サッポロの返還請求が認められなかったのは、国税当局が『<極ZERO>の原材料や製造方法等が、いわゆる<第3のビール>としての酒税法上の要件を満たさない』と判断したからだと考えられます」
どうして、そのようなことがいえるのだろうか。
「サッポロは、昨年5月製造分をもって、『リキュール(発泡性)(1)』と缶に記載されていた旧『極ZERO』の販売を終了し、昨年7月からは『発泡酒』と記載されている新『極ZERO』を販売しました。
この『リキュール(発泡性)(1)』というのが、いわゆる『第3のビール』の一種で、『発泡酒』より税率が低くなっています。
少しむずかしいのですが、酒税法では、いわゆる第3のビールについて、『政令で定める発泡酒に政令で定めるスピリッツを加えたもので、エキス分が2度以上のもの』を要件としています。
したがって、先に言及したサッポロの説明内容から、この『政令で定める発泡酒』の『製造方法』が争点になっていると推測できるのです」
サッポロは今後どのような対応をとりうるのだろうか。
「サッポロは不服がある場合、国税当局に対して異議申し立てをすることができます。異議申し立てが退けられて、なお不服がある場合は、裁判所に訴訟を提起することになります」
大和弁護士はこのように述べていた。
【取材協力弁護士】
大和 弘幸(やまと・ひろゆき)弁護士
やまと法律会計事務所 所長
事務所名:やまと法律会計事務所
事務所URL:http://yamato-law-accounting.com
(税理士ドットコムトピックス)