今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。F1第5戦 スペインGPの週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。(最高点は星5つ☆☆☆☆☆)
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☆ ロマン・グロージャン(とピットクルー)
このサーキットのピットロードは建屋とスタンドの間が、吹きだまりのようになっている。強い追い風でゴミや埃がたまりやすく、走行レーンと作業レーンの舗装も違う。40周目グロージャンが止まりきれず、勇敢なフロント・ジャッキマンや他のクルーたちが、そのあおりで軽傷を負った。それでもパニックにならず任務遂行、3戦連続入賞を支えた彼らに星を。
☆ マックス・フェルスタッペン
「予選は95%の出来」と本人は反省、セクター2でロスして予選6位(マレーシアGPと同じ自己ベスト)。トロロッソ勢の3列目占拠より母国カルロス・サインツJr.の予選5位に話題が集中、メディアが彼に殺到したので解放された。父ヨスもスタート前にモーターホームで、ひとりビールを。レースはリヤタイヤ管理に苦戦して11位、それでも最終スティントをハードタイヤで28周カバー。いいレッスンになったに違いない。
☆☆ ルイス・ハミルトン
直近11戦、9勝、7ポールポジションで迎えた第5戦。金曜FP1シケインにいて、変化に気づいた。手前13コーナーで何度もエスケープへ。ここの減速タイミングとラインを熱心に研究中。土曜もセッティング追求は続き「まるでシーソーみたいにつり合いを取るのが難しい」と。常勝の余裕なのか、高い理想を求めようと模索するコース上の態度に変化を感じた。ある意味、考えすぎた結果が予選2位。スタートではオフラインからの加速でホイールスピン。この失敗を次のモナコにどう活かすか。今回は“考える人”だった。
☆☆ ダニエル・リカルド
またここでも“耐える人”となったリカルド、5戦連続入賞中。ご存じのようにルノーPUばかりかシャシーにも難題をかかえながら、彼は5人しかいない全戦入賞者の一人。予選もトップ10から落ちていない。文句タラタラ首脳陣に不満を言うだけ言ってもらい(?)、自分はやれる限りのことをやりきるまで。
☆☆ セバスチャン・ベッテル
3度目の3位を喜ぶべきかどうか。“スペイン・ファッション”に衣替えしたSF15-Tだが路面温度が約50度まで上昇するなか、猛暑マレーシアGPのようなレースペースは見られなかった。そつなく決めたダッシュによって序盤2番手をキープできたものの、しだいにトラクション不足が露呈。セクター3タイム9位は、6位ジェンソン・バトン以下。これをなんとかカバーしたベッテル。このセクター3はモナコやカナダの指標となる。フォルツァ・フェラーリ!
☆☆☆ ジェンソン・バトン
FP2に関しては今年いちばん良い内容だとテレビ中継で申し上げた。が、FP3をセクター1で注視していて訂正したくなった。ホンダ特有の濁ったパワーユニット音が不協和音をまき散らし、トラクションはなく唐突にトルク反動が起きる。回生力とターボラグのマップ制御がシンクロしていない。ほとんど画面に映らなかったバトンのレース、「人生で最も怖かった30周」と温厚な彼が語る言葉は重い。誤解を恐れずに言わせてもらうと、2月22日フェルナンド・アロンソ事故の件がよぎった……。
☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
80km/hで制動不能、26周目のピットで起きた異常事態。アロンソでなければマシンは激しく斜行してピットガレージに突っ込んでいただろう。よく、まっすぐ止めきれた。人前では強気(ポジティブ)なコメントをサービスするサムライも、パドック裏を歩いている時など沈思黙考する姿が多くなってきた。この週末ずっと濃いサングラスでいた気持ち、よくわかる。
☆☆☆ ダニール・クビアト
チーム首脳陣からのプレッシャーが強まっている。正直なひとことがマシン批判と報じられてしまうので、グループインタビューでも慎重な態度に変わってきた。だが、コース上では不変。乱れがちなドライバビリティに俊敏に対応し、今年初めて予選でチームメイトに先行した。
☆☆☆☆ カルロス・サインツJr.
GPS測定データがあれば、はっきりするだろう。予選時の最高速19位なのに5位グリッドは、すべてコーナリングスピードによる。単独走行時のダイナミックダウンフォースがSTR10は秀逸、それを体感しつつ、さらに踏み込むのがコース脇から見てとれた。FP1シケインでの拍手歓声、一番人気はアロンソ、二番が彼、三番は意外にもスージー・ウォルフ。一躍スターに輝いたカルロスも決勝ではタイヤ管理に専念、彼も第2スティントを28周、つかむものがあったはずだ。
☆☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
ニコの心は表情だけでなく走りからも読み取れる。ポーカーフェイスなど、できない人なのだろう。初日から珍しく粗さが気になるステアリングワーク、操作すべてがアグレッシブで動物的。ハミルトン的なタッチに変わり、俗に言う「開き直り」を感じた。負けっぱなしできた第5戦、ついに予選PPを決めスタートも決めると、あとは独走モードでサラッと勝てた。
☆☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス
終盤ライコネンを完封したラップタイムペースはバラバラ、緩急をつけ、敵を攪乱する戦法。抑えどころは2本のストレート入口2カ所、そこでフェラーリを引きつけておき、出口速度を高める。後ろに目があるようにブロックラインの先手を打ち、それも毎周左右を変えてキミ・ライコネンを惑わす。まったくお見事。バーレーンでベッテル、ここではフィンランドの先輩を閉じ込めたボッタス。いま最もフェアに「抜かせない腕」を持つレーサー。
☆なし
フェリペ・マッサ、キミ・ライコネン、ニコ・ヒュルケンベルグ、セルジオ・ペレス、パストール・マルドナド、ウィル・スティーブンス、ロベルト・メリ、マーカス・エリクソン、フェリペ・ナッセ