2015年05月11日 18:11 弁護士ドットコム
「わいせつ」なデータや作品を不特定多数に送信・展示したとして、わいせつ電磁的記録送信やわいせつ物公然陳列などの罪で逮捕・起訴された漫画家・芸術家「ろくでなし子」こと五十嵐恵被告人(43)の第2回公判が5月11日、東京地裁(田辺三保子裁判長)で開かれた。
【関連記事:【インタビュー】なぜ「ろくでなし子」は「女性器アート」を作るのか?(上)】
裁判の最大の争点は、ろくでなし子さんの作品などが「わいせつ」かどうかだ。「わいせつだ」と主張している検察側は、この日の公判で、女性器をかたどってデコレーションを加えた「デコまん」という作品が展示されていた状況を問題にした。
デコまんは、東京都内の「女性向けアダルトグッズショップ」で展示されていた。検察側は「わいせつ性の判断のためには、どういう状況で陳列されているかが重要だ」として、店舗を内偵した女性警察官を証人尋問するよう求めた。
一方、弁護側は「店舗の様子は他の証拠で十分わかるはずだ」と異議を述べた。それを受けて、裁判官たちは、この女性警察官を証人として採用するかどうかについて協議したが、結局この日は判断を「留保」した。
ろくでなし子弁護団の山口貴士弁護士は公判の後、支援者向けの説明会で「『わいせつ性の判断のためには、どういう状況で陳列されているかが重要だ』という検察側の主張は、今まで出ていなかった新しい議論で、なかなか面白いことを言ってくれたと思います」として、次のように述べた。
「じゃあ、逆にアダルト雑誌を児童書のコーナーに突っ込んでおいたらどうなるのか。たとえば、無修正の本が児童書『ぐりとぐら』の横に置かれていたら・・・。
もし、展示状況の話が重要なら、逆にろくでなし子さんがアーティストとして活動している文脈も考慮しないとおかしいんじゃないのと、弁護人のほうもいろいろ議論できると思います」
山口弁護士は「たとえば、店舗で販売されていたときに『わいせつ』だったものが、美術館の職員によって購入され、美術館に展示されたら『わいせつ』ではなくなるのでしょうか。そうだとすると『わいせつの定義』はより曖昧になり、表現の自由との関係性で問題が大きい。憲法違反だという議論が、よりしやすくなるかもしれません」と話していた。
(弁護士ドットコムニュース)