リヤブレーキがまったく効かなくなり、26周目にピットインして、自らのピットボックスで止まり切れずにフロントジャッキを突き飛ばしてしまったフェルナンド・アロンソ。トラブルの原因はチームからの正式発表ではないものの、誰かの捨てバイザーがブレーキダクトを塞いでしまったためではないかと言われている。いずれにしても、パワーユニットの一部であるMGU-Kとブレーキの協調制御システムである「ブレーキ・バイ・ワイヤ」のトラブルではなかった。
16位に終わったジェンソン・バトンは、スタート直後からリヤのトラクションに問題を抱え、「スロットルに足が触れた途端リヤタイヤが滑りだし、まったく予測不能」という状況でのレースを強いられた。こちらの原因は現時点までに判明しなかったが、ホンダの新井総責任者は「パワーユニットに問題はない」と明言している。
結果にはつながらなかったが、開幕から5戦目にして、ホンダの新しいパワーユニットは初めて3日間トラブルフリーでグランプリを終えたことになる。
だが、当然ながら、新井総責任者は満足してはいない。
「我々はマクラーレンとパートナーを組んで、ひとつのチームとして戦っている。だから『今回はパワーユニットには問題はありませんでした』と言うつもりはない。パワーユニットだけで走っているわけではないので、クルマとして完成していなければ、チームとしてまだまだということ。もっと頑張らなければならない」
初入賞を目指して、バルセロナに乗り込んできたマクラーレン・ホンダだったが、残念ながら期待していた結果を獲得することはできなかった。誰よりも落胆していたのが、地元のアロンソだったことは想像に難くない。それでも、アロンソはこう言ってチームを鼓舞した。
「今日は残念な結果に終わったけれど、チームは確実に前進している。モナコには強くなって戻ってくるよ」
マクラーレン・ホンダ初入賞の舞台はモナコGPとなるのか──2週間後の進化を待ちたい。
(尾張正博)