2015年05月10日 10:51 弁護士ドットコム
「私のお金を宗教のために使ってしまう妻と離婚したい」。結婚した後に妻の「信仰」を知ったという男性から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに悩みが寄せられた。
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男性の妻は、2人の間に子どもが生まれた後に初めて「子どもの頃から信徒だった」と打ち明けたのだという。寝耳に水の告白に驚いた男性が「やめて欲しい」と懇願したが、妻は「もうやめられない」の一点張りだった。
一時は黙認しようとした男性だったが、妻はひそかに宗教活動をおこない、近所の人から「奥さんが布教活動に来た」と知らされるようになった。そのことを告げると、妻は「家族の幸せのために信仰している」と開き直ったという。
男性は我慢を重ねてきたが、それも限界に近づいているようだ。「自分が稼いだ金が妻の宗教のために使われると、『何のために働いているのだろう?』と思う」。しだいに「離婚」の意思が芽生えてきたというが、妻の「宗教活動」を理由に、離婚することはできるのだろうか? 原口未緒弁護士に聞いた。
「信教の自由は、憲法でも保障されている重要な人権です。奥様の信仰だけを理由に、裁判所に離婚を認めてもらうことは難しいでしょうね」
原口弁護士はそう指摘する。それでも、離婚の意思が固い場合、何か方法はないのだろうか。
「ご主人が、どうしても奥様の宗教活動に理解を示すことができない。もしくは、『呆れて諦めた』『疲れた』『一緒の生活にはもう懲り懲り』・・・などの理由で、離婚の決意が固い場合には、奥様を説得することは諦めて、家を出る覚悟をもたれるしかないでしょうね」
別居することで、離婚の話が進むことになるのだろうか?
「長期の『別居期間』は、離婚理由になり得ます。現在の裁判所では、婚姻関係の破たんを判断する際に、最初に重要視しているのが『別居期間』のようです。
そこで、奥様の宗教活動を理由に離婚を決意したご主人が、奥様と別居し、その別居期間が数年以上にも及んだ場合には、長期間の別居期間を理由に、婚姻関係の破たんが認められる可能性が大きいと思います」
仮に、妻が専業主婦であった場合、夫が家を出ていくと、妻は生活できなくなる可能性がある。そんな場合、夫の側に、なんらかの経済的な負担が発生するのだろうか。
「そのような場合、別居期間中は、奥様に対して、婚姻費用(別居中の生活費)を支払う必要があります。
すぐに離婚が認められることが難しい以上、数年間は、毎月、奥様に対して、婚姻費用を負担になられる覚悟をもってください。ここからは持久戦になりますが、きちんと婚姻費用を分担することは、離婚が認められる一要素にもなっているようです」
今回の男性の場合、妻が宗教をやめてくれるならば、離婚しなくてもいいと考えているようにみえるが・・・
「もし、まだ少しでも、円満な夫婦関係の回復を望まれている場合は、どうして奥様がそこまで、その宗教にのめり込んでいるのか、奥様が宗教に依存・執着せざるを得ない理由は何なのかについて、ご夫婦で一緒になって、考えていかれるとよいと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京護士会所属。ココロもケアするカウンセリング離婚弁護士。コーチング・カウンセリング・セラピーなどをもとに、調停・裁判をしないで円満離婚を実現する、『幸せになるための離婚』を提唱しています。
事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所
事務所URL:http://mio-law.com