ベライゾン・インディカー・シリーズ第5戦グランプリ・オブ・インディアナポリスがインディアナポリス・モータースピードウェイのロードコースで行われ、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がポールtoウインで今季初勝利を挙げた。22番手からスタートした佐藤琢磨(AJフォイト)は、9位まで順位を上げてレースを終えている。
今年のグランプリ・オブ・インディアナポリスはローリングスタートで始まった。ポールポジションからウィル・パワーはトップを守ってターン1へと進入。そのすぐ後ろでアクシデントは起きた。予選3番手だったエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が斜め前方を走っていたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)を突くカタチとなったのだ。
予選2番手だったディクソンはスピンに陥り、混乱の起こった後続ではジョセフ・ニューガーデン(CFHレーシング)、ジャック・ホークスワース(AJフォイト)、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)らがマシンにダメージを負った。
3周目にリスタートは切られた。ディクソンはマシンの修理に時間がかかり、周回遅れにこそならずに済んだが、大きなハンデを持ってレースに復帰することとなった。
パワーはトップを守り、2番手にはチームメイトのサイモン・ペジナウが浮上。しかし、20周周辺でトップグループが1回目のピットストップを行うと、第1スティントを長めに設定したグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン)がペジナウの前の2番手にピットアウトした。
パワーは2回目のピットストップを終えてもトップを維持。レイホールも2番手を保った。レースはスタート直後のアクシデント以来ずっとイエロー無しで続いていた。
ハードプッシュしてトップを守り続けていたパワーは、3回目のピットストップを59周で行った。レイホールはその2周後の61周目にピットイン。残り周回数をレイホールは全面プッシュできるが、パワーは燃料のセーブが必要な状況だった。ホンダエンジンの方が燃費では優位にあるようだ。
それでも、パワーには4秒以上のリードを活かし、レイホールとの間隔をコントロールしてゴールまで走り抜いた。レイホールのペースは終盤戦でも非常に速かったが、ホンダ勢はラップタイムで劣るライバルたちであってもオーバーテイクを実現するのがなかなか難しい状況にあり、パワーとの差をジリジリと縮めてはいけるものの、周回遅れが現れるとそれが不利に働いていた。
レイホールは諦めずにチャージを続けたが、1.5秒届かなかった。パワーは今季初、通算25勝目のゴールへと飛び込んだ。昨年度のシリーズチャンピオンは開幕から5戦目にして、2回目のポールポジションからシーズン初勝利を飾った。
「今日は絶対に勝つ! そうした強い思いを持ってレースに臨んだ。イエローが不運に働いて……といったレースになるのは御免だった。だからスタート直後にしかイエローが出ないクリーンなレースとなったことは良かったと思う。自分たちの望んでいた通りの戦いとなっていた」
「しかし、体力的には非常にハードだった。そして、最後のスティントは燃費が大変だった。チームに言われた数字はかなり実現が難しいものだった。レイホールが凄いペースで迫って来ていたしね。プッシュできるところでプッシュし、セーブできる場所ではセーブするという走りを続け、難しい戦いを制することができた。チームのため、クルーたちのために嬉しい勝利だ」とパワーは語った。
レイホールの2位フィニッシュには大きな声援と拍手が贈られた。激しいチャージには今年のレイホールが大きな自信を掴んでいることが現れてもいた。2戦連続2位フィニッシュを達成した彼は、「僕らのチームは大きく進歩し、高い実力を今や身に付けている。今日、シボレー勢をコース上でパスして勝利ができたかどうかはわからないが、今シーズンのここまでの戦いぶりからして、今日また2位でゴールできたことはとても嬉しいし、自信に繋がる」
「ハードなレースだった。体力的にもタフな戦いとなっていた。最後のピットストップを1周遅らせたのは僕自身の判断だったが、それが失敗だった。次のラップでディクソンとギャビー・チャベスが目の前にピットアウトしてきた。あれで2秒ぐらいロスした。ホンダはエアロキットでもエンジンでも開発を懸命に続けている。ペンスキー勢は強力だが、目指す勝利に手を届かせる日は必ず来るだろう」とレイホールは語った。
3位はモントーヤ。ペジナウは電気系トラブルでリタイア。モントーヤはセバスチャン・ブルデー(KVSHレーシング)とピットストップの差でポジションを逆転させることに成功。今季3回目の表彰台に上り、171点にポイントを逃してシリーズリーダーの座も辛うじて保った。モントーヤは171点で、パワーは今日の勝利で166点までポイントを伸ばしてランキング2位に浮上した。
佐藤琢磨は9位でゴール。22番手スタートからのシングルフィニッシュを彼自身も、チームもおおいに喜んでいた。ブラックでスタートし、第2スティントからはレッドを3連続投入。安定したペースを保ち続け、コース上でのバトルでポジションを上げながらのトップ10フィニッシュを果たした。
「良いレースを戦えました。序盤はスタート前の雨のためかマシンのバランスが悪かったんですが、レッドタイヤに換えてからはペースも安定し、オーバーテイクもできていました。今日はチームのピットストップも速かった」と琢磨は語った。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)