2015年05月09日 12:41 弁護士ドットコム
かつて交際していた男性の「妻」に尾行されて、携帯電話の電話番号を要求された――。そんな体験をしたという女性のエピソードが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに書き込まれた。
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この女性は、相手が既婚者と知らずに4カ月ほど付き合ったあと、自分から切り出して別れたという。ところが別れた後のある日、家を出てから、車で尾行されていることに気づいた。そして、立ち寄った店舗の駐車場で「元カレの妻」から話しかけられたのだそうだ。
元カレの妻からは「まず携帯電話を教えてくれ、携帯見せて!」と言われ、さらに、住所まで求められた。この女性は、携帯電話の番号は教えたものの、住所は伝えなかったという。その際、元カレの妻は、不倫の証拠をつかむために、友人に頼んで尾行していたことも明らかにしたそうだ。
女性は「怖くなり家からも出たくありません」とおびえているが、このような浮気調査のやり方に問題はないのだろうか。齋藤裕弁護士に聞いた。
「公道などにおいて、個人の情報を収集することは、プライバシー権の侵害になる可能性があります。たとえば、公道に設置された監視カメラによる撮影を違法とした裁判例もあります(大阪地裁平成6年4月27日判決)。
こうした裁判例の基準に照らすと、個人を尾行して、個人情報を聞き出そうとする行為も、プライバシー権の侵害として違法とされる可能性はあります」
齋藤弁護士はこのように述べる。
「ただ、尾行に必要性がある場合、適法となる可能性があります。
たとえば、離婚訴訟に向けた不貞調査のために数回待ち伏せをしたケースでは、待ち伏せ行為がストーカーと同列視されず、適法と認められました(東京地裁平成16年2月10日判決)」
今回のケースはどうだろうか。
「客観的にみると、この女性は、既婚男性と付き合っていたということですから、『元カレの妻』が、夫の不貞を疑うだけの状況があったと言えます。
よって、尾行をしていたとしても、適法とされる可能性が高いように思います。
携帯電話番号などを聞いた行為についても、任意で聞いたということであれば、違法とすることはできないでしょう」
齋藤弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
齋藤 裕(さいとう・ゆたか)弁護士
刑事、民事、家事を幅広く取り扱う。サラ金・クレジット、個人情報保護・情報公開に強く、武富士役員損害賠償訴訟、トンネルじん肺根絶訴訟、ほくほく線訴訟などを担当。共著に『個人情報トラブル相談ハンドブック』(新日本法規)など。
事務所名:新潟合同法律事務所
事務所URL:http://www.niigatagoudou-lo.jp/