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嵐の5人はどう信頼関係を築いたか 『ARASHI BLAST in Hawaii』で明かされた“本音”

2015年05月09日 08:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』

 嵐のハワイツアーの模様を収めたライブDVD&Blu-ray Disc(以下BD)『ARASHI BLAST in Hawaii』を検証するこのシリーズ。振り付けについて検証した第1回【嵐『ARASHI BLAST in Hawaii』の振り付けに見る、トップアイドルとしての姿勢】、演出を検証した第2回【嵐『ARASHI BLAST in Hawaii』のコンサート演出に見る、圧倒的なエンターテイメント性とは?】に続き、今週はDisc2に収録されたドキュメンタリー映像「Documentary of “BLAST in Hawaii”」について見ていきたい。


 「Documentary of “BLAST in Hawaii”」は、嵐のメンバーがハワイに到着してから、2日間に渡る公演を終えて、公演後にオフを楽しむ姿までを追ったドキュメンタリーで、彼らの舞台裏を密着型のカメラワークで切り取った映像作品だ。その日のスケジュールを丁寧に追った構成により、スタッフの一員として彼らに寄り添っているかのように感じられるところが、ファンには嬉しいポイントだろう。


 ハワイ到着後、メンバーはデビュー会見で同地を訪れたときのことを振り返りながら、当時と同じ場所、同じポーズ、同じ衣装で、写真撮影を行っていく。デビュー時と同じボートに乗った際は、メンバーが口々に「マジで全然覚えてねぇなぁ」、「こんなに小さかったっけ?」と言いながら、忘れていた記憶を辿る。15年という歳月の長さを感じられるシーンだ。その後は、リハーサルの模様や、メディア対応のシーンが続く。リハーサルでは松本潤が、舞台演出について「手の振り付けと(舞台の演出が)違う動きをしているから、揃えたほうがいい」と、演者ならではの視点から調整の指示を出す場面も収められていて、松本が普段どのようにして演出に参加しているのかがわかる。嵐のコンサートが、各メンバーの創意工夫を通して完成していく様子が伝わる一コマだ。


 コンサートの舞台裏でも、カメラは回っている。緊張感のある本番中でもファンを気遣う5人の表情や、メンバー同士で声を掛け合う様子、スタッフたちとコミュニケーションを取る姿などに、プロフェッショナルなエンターテイナーとしての姿勢や責任感を感じる。大雨の中、びしょ濡れになりながらパフォーマンスを行う姿には、ファンならずとも感動を覚えるだろう。ライブ直後のコメントでは、相葉が本番中に泣いたことを二宮がからかうシーンもあり、いつもの5人の表情も見ることができる。


 個人的にもっとも興味深かったのは、公演後のメンバーのインタビューだ。それぞれに15年を振り返って、嵐というグループへの思いやかつての悩みを語っているのだが、それはかなり本心に近いのではないかと思う。たとえば大野智は、「別に大したことはしてないっていう感覚が常に自分の中にあるから、やらせていただいてありがとうございますって感じ。常にファンのひとに持ち上げられて、支えられてきた。歳食えば食うほど、そう思うし、正直テレビ出るのも恥ずかしいもん。ワーキャー言われるのも『いやオッサンだし』と思うし。気を使ってくれてありがとうって思う」と、自らがアイドルであることをどこか客観視しながらも、ファンへの感謝を語っている。


 また、櫻井翔は「仲良い一点張りが嫌だったから、僕は個人的にそこを離れてみたんですけど、やっぱりあんまりそぐわなかった。(中略)いろいろクリエイティブなことを5人でやっていく中で、肩をいっしょに組んでいる感じが良いなって思っている」と、仲の良さを評価されることへの本音を明かしている。あるいは松本潤は「あの4人が同級生でいたら俺、仲良くなっていないと思うんですよね。でも嵐っていうグループでやってくださいって言われたわけで、だからこそバラバラな人たちがどうやったらひとつになれるかってすごく考えるし、それぞれで仕事していても、嵐に還元できるようにって思う」と、仕事として知り合ったからこそ培えた関係性について語っている。


 嵐というグループはもちろん、単なる仲良し集団ではないし、いつも一緒にいて遊んでいるわけでもない。厳しい芸能界の中で生き残るために、それぞれにプロフェッショナルな意識を持って仕事に臨んできたグループで、だからこそ理想的な関係性を築くことができたということが、このドキュメンタリーからは存分に伝わってくる。性別や世代を問わず、ぜひ一度は鑑賞することをお勧めしたい。彼らの深みのある言葉や潔い姿勢に、きっと背中を押されるはずだ。(松下博夫)