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藤巻亮太が「ニコニコ超会議2015」に降臨 カオスなイベントでなぜ主役に?

2015年05月08日 18:31  リアルサウンド

リアルサウンド

藤巻亮太「ニコニコ超会議2015」に降臨

 4月25、26日に千葉・幕張メッセで開催され、15万人以上が詰めかけた「ニコニコ超会議2015」。その初日、レミオロメンのボーカルで現在はソロ活動を行う藤巻亮太が“降臨”し、弾き語りで会場をひとつにした。音楽だけでなく、ゲームあり、アニメあり、自衛隊ブースから大相撲にプロレス…と、オープンスペースでさまざまな催しが行われるカオスすぎるイベントで、なぜ藤巻が主役になったのか?


 ニコニコ動画に親しんだユーザーなら誰もが知るところだが、それはレミオロメンの「粉雪」(05年11月リリース)が、同サイト随一とも言える人気曲だからだ。06年にプレオープンしたニコニコ動画上に、当時ロングヒットを記録していた「粉雪」の動画がアップロードされると、印象的なサビのフレーズに合わせて、多くのユーザーが「こなああああああああゆきいいいいいいい」とコメントを投稿。いまではおなじみになった、ユーザーが声(コメント)を合わせる“弾幕”の発祥ともされ、多くのMAD動画が作られるなど話題を広げてきた。


 きゃりーぱみゅぱみゅの「PONPONPON」やSEKAI NO OWARIの「Dragon Night」にも多くの投稿が集まったが、「粉雪」ほど長く話題になり続けてきた曲は他にないのではないか。「粉雪」は、一時的に面白がられるだけでなく、サイト黎明期から現在に至るまで愛され続けている。生のイベントでは“弾幕曲”から“合唱曲”となり、昨年まで「超会議」の後夜祭的に行われていた「ニコニコ超パーティー」では、運営スタッフ、エンジニア、プロデューサーらがステージに上って、涙ながらに熱唱したこともあった。とにもかくにも、そんなニコニコ動画のイベントに満を持して“ご本人”が登場するというのだから、ユーザーの期待も高まるというもの。当日の現場はどんな盛り上がりを見せたのか――。


 会場の一角に設営された「超音楽祭」のステージでは、開場直後からライブがスタート。ニコニコ発の人気ボーカルグループ・ROOT FIVE、アニメソングを数多く手がける藍井エイルやGARNiDELiA、すべてボカロ曲のカバーで臨んだ松岡充(MICHAEL)など、ゆかりのアーティストたちが会場を沸かせ、残すところ3組に。“踊ってみた”カテゴリで絶大な人気を誇るアイドルグループ・℃-uteと、大ヒットゲーム&アニメから飛び出した声優ユニット・THE IDOLM@STERに挟まれる形で出番を迎えたのが、藤巻だった。


 アコースティックギター1本で登場した藤巻は、観客に「レミオのある曲が、(ニコニコに)縁があるんですよね。違いましたっけ?」と呼びかける。大歓声のなか、続けて「♪むなしいだけ~ ハイ!」と促すと、割れんばかりの合唱が始まった。サビの1フレーズが終わったところで、「お前ら、サイコー!」の一言とともに演奏を開始。思わず目頭を熱くする観客も見られた。ネット配信で映像を見ていたユーザーたちも、「やっぱイントロから神だわ」「名曲は色あせることはない」「涙が…」「最高!!」などのコメントを打ち、サビではもちろん、配信画面が処理落ちで停止するほどの“弾幕”で応えている。


 藤巻がこの日、披露したのは計2曲。1曲目に新曲「旅立ちの日」を演奏すると、最初こそ「粉雪」を期待するユーザーの「こな(ゆき)…こな(ゆき)…」と催促するようなコメントも見られたが、曲が始まれば「やっぱいい声だなあ」「心にしみる曲だね」「圧倒的歌唱力!」とのコメントが流れた。本人が弾くアコースティックギターと、鍵盤だけというシンプルな構成だからこそ、歌の力がダイレクトに伝わってくる。レミオロメンの活動休止後、2年間にわたって全国のライブハウスをまわり、弾き語りのライブを敢行してきた藤巻だからこそ、趣味の幅が広すぎるリスナーたちを釘付けにできたのだろう。5月13日リリースのミニアルバム『旅立ちの日』には、その他にもJリーグ・ヴァンフォーレ甲府のアンセム(応援歌)「ゆらせ」など、アーティストとしての充実ぶりがわかる計6曲が収録されており、大きな話題になりそうだ。


 ニコニコ動画は若者にとって、クリエイターやその作品との出会いと別れを繰り返す場でもあり、いまや卒業式の定番ソングになったボカロ曲「桜ノ雨」に代表されるように、卒業ソングや旅立ちをテーマにした楽曲も人気を博している。旅立ちを前に、臆病な心を奮い立たせ、過去を抱きしめながら、まだ見ぬ明日へ進んでいく――そんなメッセージが込められた「旅立ちの日」も、多くのユーザーの心に届いたに違いない。


(文=橋川良寛)