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藍井エイルが国内外でファン急増の背景とは?  『Mステ』出演を機に新たな地平へ

2015年05月07日 18:11  リアルサウンド

リアルサウンド

5月8日の『ミュージックステーション』に出演する藍井エイル。

 世界で活躍する歌手・藍井エイルが、5月8日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演。LiSAも同番組に出演するため、アニソン出身の歌手が顔を並べるという番組史上初の試みとなる予定だ。


 藍井は、2010年に動画サイトでその高い歌唱力により話題を呼ぶと、2011年にアニメ『Fate/Zero』のエンディングテーマ「MEMORIA」でメジャーデビュー。以降、『アルドノア・ゼロ』や『ソードアート・オンラインⅡ』、『キルラキル』など、様々なアニメのテーマソングを手掛け、多くのファンから支持を得ているアーティストだ。


 近年、主にインドネシアやフランスを中心に日本のアニメに対する人気と評価が急上昇していることもあり、世界にはアニソン歌手のステージを待ちわびるファンが増えている。そんななか、藍井は2年前より、各国のアニメフェスティバルやコンベンションへ積極的に出演し、海外でのファン層を開拓。2015年も、フランスはパリを皮切りに、ロンドン、サンフランシスコ、アトランタ、シンガポール、台北、香港と、7月から10月にかけてヨーロッパ、アメリカ、アジアの7都市を回る海外ツアーを開催すると発表している。初めての海外公演であるシアトルから2年間で9カ国11都市20回のパフォーマンスを行ってきた彼女は、今や日本では収まりきらないグローバルな活動で多くの支持を集めている。


 各地のファンから藍井の魅力としてまず挙げられるのが、その類稀なる歌唱力だ。自身が影響を受けたと公言しているDo As Infinityの伴都美子にも通じる力強さに加え、筆者が先日とある取材で藍井に話を訊いたとき、彼女はフェイバリット・アーティストの一つにエヴァネッセンスを挙げており、非常に納得したことを覚えている。彼女の歌声はメタルやハードロックと親和性があるパワフルさがあり、同時にポップスの領域でも通用する稀有な歌唱力を持ち合わせているのだ。藍井の歌声には異なるジャンルを横断するエモーションが備わっており、その力は、ハードなロックサウンドと力強い歌声がやはり相性抜群な新曲「ラピスラズリ」でも存分に活かされていた。BABYMETALが海外で急速に支持を広げたように、彼女のロック的なパフォーマンスは、アニソンという文脈を飛び越え、世界で受け入れられる余地がある。


 となると、今後の活動において期待されるのは、国内でさらなるブレイクを果たすことだろう。ブレイクの定義をどう取るかは難しいところだが、ここでは“いかにお茶の間に支持を広げたか”を軸に話を展開したい。前例としては、声優として多大な功績を残しつつ、『innocent starter』や『ETERNAL BLAZE』などで歌手としての才能を開花させた水樹奈々や、マルチタレントながら『空色デイズ』が大ヒットした中川翔子のように、『紅白歌合戦』に出場したシンガーが挙げられる。いずれも歌手以外の活動をしていることがアドバンテージに捉えられがちだが、その実力は折り紙つき。さらに写真集のようなカットを収めたアーティストブックなども次々とリリースされ、女性人気も高いことから、幅広い層へリーチしていることがわかる。この2人を挙げたのは、藍井が歌手として多様なファンを獲得し、ライブ会場にも女性の姿が増えていることに、J-POPシーンで一層存在感を高める可能性を感じたからだ。


 今年はそういった意味合いでも、6月24日にリリースする3rdアルバム『D’AZUR』や、11月2日に行う自身初の日本武道館ワンマンライブなど、彼女がより広い地平へと踏み出すためのタイミングが多く用意されている。そして、今週の『ミュージックステーション』出演は、彼女のキャリアにおいてターニングポイントのひとつになるかもしれない。番組史に残るこの試みが、どのような化学反応を起こすのか見届けたいところだ。(中村拓海)