2015年05月07日 13:31 弁護士ドットコム
刑事事件の初公判なのに被告人の「弁護人」が法廷にあらわれず、予定時間に開廷できないというトラブルが4月中旬、青森の地方裁判所で起きた。報道によれば、暴力行為等処罰法違反で起訴された事件の初公判に弁護士が現れなかったため、予定よりも約2時間遅れて、法廷が開かれたのだそうだ。弁護士は、開廷時間を勘違いしていたという。
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刑事訴訟法289条は「死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がいなければ開廷することはできない」と定めている。今回の被告人が起訴された罪も、同条に該当していたため、弁護士の到着を待つほかなかったという。
では、刑事裁判でも、刑訴法289条に該当しない「軽微な犯罪」の場合は、弁護人の立会いがなくても、裁判が進められることがあるのだろうか。元検事の諸橋哲郎弁護士に話を聞いた。
「刑事訴訟法289条に該当する事件を『必要的弁護事件』といいます。この場合は、弁護人がいなければ、裁判の手続きを進めることができません」
そのため「必要的弁護事件」の場合、自分で私選弁護人を依頼していない被告人については、裁判所が「国選弁護人」を選任しなければならない。
では、法定刑の軽い軽微な犯罪の場合は、弁護人不在のまま開廷することがあるのだろうか。
「刑事訴訟法上は、『必要的弁護事件』でなければ、弁護人がいなくとも裁判の手続きを進めることができることになります。ところが実際には、ほとんどの事件で『国選弁護人』が選任されています。
裁判の手続きは難しいものです。また、無罪を主張する場合はもとより、有罪を認めている場合でも、被告人本人にとって、どんな主張や事情が有利となるのか、難しい判断となることがあります。裁判となった場合は可能な限り、弁護人をつけてもらったほうがいいと思います」
諸橋弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
諸橋 哲郎(もろはし・てつお)弁護士
日本大学法学部卒業。東京地検、1982年検事任官、東京地検山形地検に勤務し、1989年弁護士登録。1998年山形市情報公開・個人情報保護審査会会長、2007年山形市体育協会理事、2010年日弁連弁護士業務改革委員
事務所名:諸橋法律事務所