ずぼら栄養士の川村郁子(29歳)は、テレビを見ながらエイヒレを肴に酒を飲んでいた。
「ああー、今日もいい仕事した。酒がうまい!」
ほろ酔いである。充実感に気分が良い。
と、そのときテレビに消防士が映った。
「いやーん、あの分厚い胸板に埋もれたい~! 鼻血出そう~!」
そして郁子は思った。あんなムキムキマッチョ消防士と自分が結婚することになったら……。ラブラブむふふ生活のなか、消防士のたっちゃん(今、名前を決めた)に何を食べさせよう?
◼そして郁子は妄想の世界へ……
しかし、郁子はスボラである。そして、結婚しても、仕事は続けたい。仕事をして帰って来れば手を込んだ料理を作っている時間はないかもしれない。
夫のたっちゃんはきっと不器用だからお料理を任せることはできないけれど、「オレたち、共働きだし郁子も疲れているだろうから、コンビニのハンバーグでいいよ」と優しく言ってくれるだろう。
でも、例えばたっちゃんが職場でちょっとうれしいことがあったときなどには、腕によりをかけたお料理を作ってあげたい!
◼︎肉好きたっちゃんを喜ばせつつ、手をかけるなら2食分作りたい
きっとたっちゃんは肉好きだ。肉汁がたっぷりでボリューム満点の料理が好みだ。だからうれしいことがあった日はメンチカツにしよう。消化がよく、スタミナ満点で、疲労回復にも役立ち、なんといっても手軽に作れるようなメンチカツ。
しかもメンチカツなら、同時に同じ材料で豚肉ハンバーグ、通称「トンバーグ」も作れる! 使う材料を減らして調理を簡単にし、材料費を抑えて無駄を省くことで、「やりくり上手」をたっちゃんにアピールしたい。
郁子は栄養士の専門性と数々のレストランのメニューを監修してきた経験をフルに活用し、レシピを考案した。
◼たっちゃんに食べさせたい「アボカドとろーりメンチカツ」
郁子が考案したのは、食材料数と食費を抑えつつ栄養バランスも◎のお手軽「アボカドとろーりメンチカツ」。同時にトンバーグの仕込みも完了する。味噌を隠し味に使うので、コクもしっかり出ている。これがそのレシピだ。
【材料(たっちゃんと私の2人分&2食用)】
<メンチカツ+トンバーグ用>
・豚ひき肉:400g
・新玉ねぎ:1/2玉
・アボカド:1/2個
・塩こしょう:少々
・ナツメグ:少々
・味噌:小さじ4
・卵:1個
・小麦粉:大さじ1
・パン粉:適量
・揚げ油:大さじ3
<あっさりダレかけキャベツとトマト>
・お酢:大さじ1
・みりん:大さじ1
・醤油:大さじ1
・春キャベツ:1-2枚
・トマト:適量
【作り方】
1.玉ねぎは粗みじん、アボカドは半分に切って、縦に5、6等分する。たっちゃんは「包丁の音っていいよな」とボソッとつぶやくかもしれない。
2.袋の中にひき肉を入れ、玉ねぎ、塩こしょう、ナツメグ、味噌を加えてよく揉む。体のことを気にしないたっちゃんにも、ちょっと発酵食品を食べさせたい。だって私の大事なたっちゃんだもの。
3.袋の半分を取り、アボカドを2切れずつ入れて小判形に成形する。たっちゃんのは大きめ、私のは小さめ。
4.小さいボールや丼に卵を割り入れ、小麦粉を混ぜて卵液を作る。ダマになっても気にしない。
5.別の小さいボールやカップにパン粉を入れておく
6.3を4の卵液にくぐらせ、5に入れてパン粉をつける
7.残ったパン粉と卵液は3のタネに混ぜ込み、成形してラップに包んで後日用のトンバーグとして冷凍する。たっちゃんはきっと「ハンバーグ? ハンバーグ?」って喜ぶかも!
8.6のメンチカツのタネが全て並べられる程度の大きさのフライパン(または厚手の鍋)に油をしき、鍋を傾けながら両面揚げ焼きにする。背中からたっちゃんが「いい匂いだな」と抱きしめてくるかも……。「やーん、ダメ! たっちゃん、メンチカツが焦げちゃう! 私の背中も焦げちゃうよ!」
9.キャベツは大き目の千切りにし、お皿にトマトと、タレ、メンチカツを乗せれば完成!
春キャベツは柔らかいから大きく切っても手でちぎっても大丈夫。揚げ焼きにしてフライパンを傾けながら焼けば油の量も少なくて済んじゃう。たっちゃんがメタボ腹になったら困るもの!
◼︎栄養だってばっちりなのだ!
このアボカドとろーりメンチカツに、即席のわかめスープを添えれば、スタミナ満点で栄養だってちゃんと考えられているご飯ができる!
たっちゃんには言わないけれど、栄養のこだわりポイントはこれだっ!
・たっちゃんも私もいつまでも若々しくいたいから、動物性の油と植物性の油をバランス良く!
・肉ばっかりでたっちゃんがメタボ腹になると困るから、付け合せのキャベツはメインかのようにたっぷりと。うまタレは油分なしでバランス◎
・キャベツには胃の粘膜を保護するビタミンUがあるので、油っぽい料理に最適!
・豚肉には鉄分が多く、キャベツのビタミンCとともに食べると吸収UP! 力仕事のたっちゃんにも貧血気味の私にも◎
◼︎妄想は続くのだった……
こんな料理を作れば、きっとたっちゃんは、「俺のヨメのご飯は最高だ!」と狂喜して、私をお姫様抱っこしてくれる。私はたっちゃんのたくましい首筋に噛み付いて、そのあとは……
と、郁子は酒をすすりながら、果てしなく妄想を続けるのだった。
※この記事は妄想をもとにしたフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありません。ただしレシピ部分は管理栄養士の川村郁子さんの考案したものです。安心してお召し上がりください。
撮影・調理・取材協力=川村郁子さん
撮影・調理・執筆=山川ほたる (c)Pouch