2015年05月04日 10:51 弁護士ドットコム
結婚相手の親族との「同居」をめぐるトラブルは、何も「嫁と姑」に限った話ではない。妻の実家で義父母と暮らしているという男性から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこんな悩みが寄せられた。
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この男性は妻とケンカしたのをきっかけに、妻の父親から「本宅への出入り禁止」を命じられ、同じ敷地にある「離れ」での独居暮らしに追いやられたそうだ。
さらに義父には「本宅のカギを返却しろ」「3ヵ月以内に敷地内から出て行け」とまで言われているのだという。一方、妻は、子供を連れて本宅にこもってしまった・・・。
男性は「『本宅』も『離れ』も義父の持ち家ではありますが、こんな『引っ越し命令』に、法的効力はあるのでしょうか? 私は妻子と別居しなければいけないのでしょうか?」と質問している。
この気の毒な男性は、義父の命令に従う必要はあるのだろうか? 石川和弘弁護士に聞いた。
石川弁護士によれば、妻の実家での「同居」でも「契約」が成立したといえるそうだ。
「義父が建物所有者であることを前提とすると、入居した際に、義父(貸主)と相談者(借主)との間で、建物(範囲は、従前、使用していたスペース)について『使用貸借契約』(民法593条)が成立していたと考えられます」
この「使用賃借契約」は、賃料を払ってアパートなどを借りる「賃貸借契約」とは異なり、「無償」で借りるものだ。親子や兄弟、友人などとの間の信頼関係に基づいて結ばれることが多い。
では、「使用貸借契約」に基づき、義父は「出て行け」と言えるのだろうか?
「『使用貸借契約』が成立して、無償で貸していた場合でも、貸主が借主に対して、いつでも『目的物(貸したもの)を返せ』と求めることができるわけではありません。今回のケースでも、義父は相談者の男性に対して、『3カ月以内に引っ越すように』と、一方的に退去を命じられる立場ではないのです」
では、何か理由があれば、違うのだろうか?
「このケースでは、相談者が、いつ建物から退去する予定か、入居時(使用貸借契約時)には明確になっていなかったと思われます。そのような場合を想定して、民法597条2項には『契約が定めた使用及び収益を終わった時に』目的物を返還しなければならない、とあります」
この「契約が定めた使用及び収益を終わった時」とは、具体的にはどんなときなのか?
「今回のケースでいえば、相談者は、結婚を機に、義父宅での同居を始めました。夫婦には同居義務がありますので、『別居』はこの義務に反する行為です。また、離婚を決めるなど『婚姻関係が破綻した』と言えるのであれば、同居生活に必要な『建物の使用』が終了したとも言えます。
しかし、相談者のケースは、夫婦間に一時的に不和が生じているだけに過ぎないようです。婚姻関係が破綻していると評価できない場合、義父が相談者に対して、本宅への出入り禁止を要求することはできないと考えられます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
石川 和弘(いしかわ・かずひろ)弁護士
平成9年弁護士登録。主たる取扱い分野は、建築、不動産、交通事故、相続。モットーは、「分かりやすい説明と迅速な対応」
事務所名:弁護士法人札幌・石川法律事務所
事務所URL:http://ishikawa-lo.com/