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万博開催中のミラノは食とアートがトレンド?トリエンナーレデザイン美術館で企画展

2015年05月03日 21:42  Fashionsnap.com

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Arts&Foods展 エントランス Image by: Kaoru URATA
5月1日、2015年ミラノ国際博覧会がグランドオープンを迎えた。テーマとして「地球に食料を、生命にエネルギーを」を提唱する。これと並行し、食とアートに関連するKitchens&Invaders展とArts&Foods展が、ミラノ市内のトリエンナーレデザイン美術館で開催中だ。(取材・文:Kaoru URATA)

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 地上階のArts&Foods展では、1851年から現代に至る「食」について、台所や食卓、ピクニック、カフェやレストランなどを空間設定した展示で紹介する。それらが、印象派や前衛派、ポップアートという時代の流れに沿って、映画監督、画家、建築家、デザイナー、カメラマンといったアーティストの視点から語られている。日本やベトナムをはじめとする東洋の漆器、調理器具、サーバーなど素材も多種多様だ。
 人類が生きるために食べる行為と快楽を持ち続けることは世界に共通しているが、食糧難は現在でも深刻な課題。 展示されている戦中から戦後にかけての配給車を見ても、戦争を体験したことのない人々には、その苦労を心底理解することは不可能だろう。農業に携わる生産者の労力があってこそ、一粒の小麦や米の恩恵に与れるのである。一羽のターキーを囲んで頂く至福の時間を表現したポスターなどを見ると、飽食時代に忘れてしまいがちな「食」の有り難さを再認識させられる。それらが、どこか嬉々とした演出で並んでいる。
 イタリアの香りも言えるコーヒーは、器によって味が異なる。展示では、ミルやメーカーなどの機械や道具のデザインが進化していく様を楽しめる。それらが時代背景に位置付けられるために、壁面に映画のワンシーンを投影。見応えがたっぷりとあり、コレクターであれば気になるオブジェや道具が存分にあることは間違いない。
 上階のKitchens&Invaders展のタイトル「キッチン」と「インベーダー(侵入者)」という組み合わせには、サイエンスフィクション的な意味合いが漂っている。ジャック・フィニイ作の「ボディ・スナッチャー」からインスピレーションを受けたことに由来するという。地球に訪れたエイリアンが侵入者から陰謀者になり、人間を操作するSF作品だ。これを置き換えて解釈すると、19世紀半ばから産業の活性化により、キッチン空間に機械が侵入して手作業を代行。しかし、産業が陰謀者になったことで、電化製品も発展を遂げたといえるのではないだろうか。入場の際に手渡されたA3サイズのマップには280点以上の作品がリストアップされ、12テーマが12空間に区分された配置。色々と想像を巡らして、時間をかけて鑑賞したい。
 会期は、Arts&Foods展は2015年11月1日迄。Kitchens&Invaders展は2016年2月21日迄。
(取材・文 Kaoru URATA)
■トリエンナーレデザイン美術館:公式サイト