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ミュージシャンらが振り返る、忌野清志郎の音楽 曽我部恵一「もう守るものが何もない、全部投げ出してる歌」

2015年05月03日 13:31  リアルサウンド

リアルサウンド

『SONGS』公式HP。

 5月2日放送の『SONGS』(NHK総合)は、この日が命日にあたる忌野清志郎を特集。同日に開催されたイベントに出演したアーティストとともに、彼のパフォーマンスを振り返った。


(参考:開館50周年を迎えたロックの殿堂 ライブハウス“武道館”の歴史を振り返る


 “大人の心を震わせる音楽番組”をコンセプトに掲げ、様々な形でアーティストの歴史を振り返る同番組。今回は、5月2日に渋谷公会堂で開催されたイベント『忌野清志郎ロックン・ロール・ショー』に出演したアーティストがライブ終了後に寄せたコメントや、2008年に放送した『SONGS~忌野清志郎~』をはじめとしたNHKアーカイブスより、清志郎の珠玉のパフォーマンスを紹介した。


 冒頭ではイベント会場より、ライブを終えたばかりの模様を放送。箭内道彦と武内陶子アナウンサーがMCを担当し、ゲストにはライブに出演した奥田民生・曽我部恵一・Char・TOSHI-LOW(BRAHMAN)・トータス松本(ウルフルズ)・浜崎貴司が参加した。トークの前には奥田民生の「スローバラード」、トータス松本の「ラプソディー」、Charによる「S.F.」、曽我部恵一が歌った「九月になる前に」、TOSHI-LOWの「明日なき世界」、浜崎貴司の「いい事ばかりはありゃしない」、そして全員が熱唱した「雨上がりの夜空に」と、忌野清志郎の名曲群カバーがダイジェスト映像でオンエアされた。


 VTR後、Charは清志郎の功績について「日本語でロックをわかりやすくやった最初のアーティスト。RCサクセションは当初フォークをやっていたけど、ロックバンドになったときに見に行って『これから日本のロックはこうなるんじゃないかな』って思った」と語ると、奥田は「歌い方が独特だけど上手。外れてるように聴こえがちなんだけど、ピッチが完璧なんです」と、ミュージシャン目線から彼の歌唱力を分析した。


 その後、番組では清志郎の魅力を振り返るVTRを紹介。フォークから始まったRCサクセションの音楽が次第にロックに移行していく過程や、「雨上がりの夜空に」がヒットした前後のライブ、反原発・反核を歌った『COVERS』が発売中止になった騒動、忌野がライブで観客に「愛し合ってるかい?」と問いかける映像がオンエアされた。VTRを見た箭内は「一方的な愛があふれる世の中で、早くから愛し合うことの必要性を説いてくれた」と、清志郎がファンに伝えたメッセージを読み解くと、Charは「向こうで『LOVE&PEACE』って言いだしたことを受けて『それが必要なんだ、Charも付き合ってくれ』と電話で相談された」と、名言の裏に隠されたエピソードを明かした。


 トータスは、最初に清志郎を見た際の印象について「あの衣装は誰も着こなせない。仮面ライダーなどのヒーローものと変わらないインパクトを受けた」と語ると、浜崎は「社会的や愛のメッセージも歌うけど、どこかで必ずふざける。留守電に『ロックのカリスマ 忌野です』って残されたこともある」と、彼のユーモラスな一面を明かした。また、曽我部は「もう守るものが何もない、全部投げ出してる歌」と歌に込められた精神について語ると、TOSHI-LOWは「リアルタイムでぐっと来たのは『COVERS』で、メジャーで反骨精神を出してしっかり発言していることに感銘を受けた。彼にロックやパンクの源流のようなものを見ていた」と、また違った視点から清志郎の音楽を読み解いた。


 番組中盤では、喉頭がんによる闘病生活から復帰し、最後のテレビ出演となった『SONGS~忌野清志郎~』(2008年)の映像と「スローバラード」歌唱の模様を放送。その後、Charは“清志郎に貰ったもの”として「その時代、時代で作家として思ったことを楽曲にするけど、ストレートじゃなくてちょっとヒネるからロックなんだろうな。今いたら何やってたのかなって思うし、『清志郎だったらどうするかな』って考えちゃう」と、現在も影響を受け続けていることを語ると、トータスは「シリアスな歌を歌ううえで、ユーモアは絶対必要」と忌野清志郎の絶妙なバランス感覚について述べた。


 番組の最後には、Charが同イベントについて「亡くなった清志郎を弔う感じだけど、彼が持っていた明るさが人を繋いで、こういうことが出来ている」と語り、『SONGS~忌野清志郎~』から「雨上がりの夜空に」の映像をオンエア。懐かしのVTRとともに番組が終了した。


 忌野清志郎を敬愛するミュージシャンたちが、その功績や偉大さを改めて語った今回の放送。今回のイベントなどを通じて、彼の音楽は若い世代にも受け継がれていくはずだ。(向原康太)