2015年05月02日 10:21 弁護士ドットコム
ゴールデンウィークの帰省や行楽で車を利用する人にとって、数時間にもわたる渋滞は頭痛の種だ。特に困るのが、トイレに行きたくなったとき・・・。ツイッターにも「1時間以上我慢してるけど、もう限界」など、トイレ難民の悲痛な叫びが数多く投稿されている。
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そして、ようやくたどり着いた、サービスエリアのトイレ。しかし女性客には、さらなる難関が立ちはだかる。帰省時に東名高速道路を利用するJ子さん(30代)がいう。
「女性トイレは、異様に長くかかる人も多いので、長蛇の列がよくでき、殺気立っているんです。一方で、隣に男性トイレは回転が早く、雰囲気も穏やかに見えます。立ちションできる彼らが本当にうらやましい・・・。絶対に見ないと約束するから、使わせてもらえないか、といつも思っています」
行列に並べる余裕がないほど切羽詰まっている場合、もしも異性側のトイレが空いていたら、使っても問題ないのだろうか? 尾崎博彦弁護士に聞いた。
「異性用のトイレに入ることは、形式的には、『建造物侵入罪』となる可能性があります」
尾崎弁護士はこのように切り出した。
「『建造物侵入罪』が成立するのは、およそ、正当な理由なく、人の管理する建造物に侵入した場合です。
ここで言う『侵入』とは、管理する人の承諾なく建物に立ち入ることです。通常、サービスエリアなどを管理している人は、異性のトイレに入ることを承諾していません。したがって、『侵入』にあたると考えられるのです」
どうしてもトイレを我慢できなかった、という事情があってもだめなのか?
「『どうしても我慢できなかった』という場合にまで、管理者が絶対に承諾していないかというと、必ずしもそうではないかもしれません。その場合、建造物侵入罪は成立しないとも考えられます。
また、こういった場合、刑法における『緊急避難』が成立するという考え方もありますが、緊急避難が認められるのは、『自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため』に限られています。
今回のケースが、管理者の不許可の範囲外だったか、あるいは緊急避難に該当するかどうかは、検討の余地があるでしょう。その際には、切迫の程度や代替手段の有無、立ち入った時間(用を足したらすぐに退去したか)などが考慮のポイントになると思われます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
尾崎 博彦(おざき・ひろひこ)弁護士
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員
事務所名:尾崎法律事務所
事務所URL:http://ozaki-lawoffice.jp/