2015年04月30日 21:21 弁護士ドットコム
地下鉄サリン事件など4つの事件に関与したとして、殺人などの罪に問われたオウム真理教元信者、高橋克也被告人(57)の裁判員裁判で、東京地裁(中里智美裁判長)は4月30日、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。高橋被告人は17年間におよぶ逃亡の末に逮捕され、一連の関係者の中で最後に起訴されたことから、「最後のオウム裁判」と呼ばれている。
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この裁判には、被害者の遺族ら4人が、オウム真理教の事件を契機として始まった「被害者参加制度」を利用して参加。傍聴だけでなく、高橋被告人に対する質問もおこなってきた。4人は判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。
地下鉄サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさんは「(オウム事件の他の被告人たちに対して)無期懲役・死刑が確定してきた中で、一人だけ有期懲役ということは許されない。無期懲役という判決に、ほっとしている」と述べた。
地下鉄サリン事件で、妹が身体に重い障害をおった浅川一雄さんは、高橋被告人について「自分自身がどれだけ大きな誤ったことをして、どれだけの人に迷惑をかけたか。そこに自分がどう携わってきたのかを真剣に考えてほしい」と語った。
オウムによる公証役場事件で父親を亡くした假家実(かりや・みのる)さんは、被害者参加制度を利用したことについて、「これまで傍聴は、(法廷の)柵の外側、被告人のうしろ姿が中心だった。柵の中に入ると、横から高橋被告人の表情がよく見えた。同じ言葉でも、どういう感情をもって発言しているのかということが、よく読み取れた。柵に入っていることで、裁判を構成する一員だという責任感も感じた」と語った。
会見に同席した中村裕二弁護士(オウム真理教犯罪被害者支援機構・副理事長)は、今回の裁判で、裁判員裁判と被害者参加制度の両方が実施されたことについて、「市民感覚を取り入れて、正義に近づこうとする裁判だ」と評価。「裁判員裁判と被害者参加は一対のものだ。一般の方にわかりやすく、目で見て、耳で聞いてすぐわかる裁判でないと成り立たない」と振り返った。
また、中村弁護士は、一連のオウム事件は、これから同様の事件を起こさないための貴重な情報を含んでいると指摘し、次のように訴えていた。
「信者たちがマインドコントロールされて、信じられない事件を起こしている。そうした心理について、諸外国では研究したいという声がある。日本では、内部調査も十分にしないまま、死刑になっていく。そうしたことは、次のオウムを生む原因にもなると思う。そうした調査をしっかりすべきだ」
(弁護士ドットコムニュース)