新たなビジネスアイデアをどう育てるか。新規事業部を立ち上げて専任の社員で取り組んだり、社内でコンペを行って広く集めたりと、各社の方法はさまざまです。
米ビジネスインサイダーは、アドビシステムズの取り組みを紹介しています。アドビといえば、PDFやIllustratorで知られる世界最大規模のソフトウェア会社です。同社の取り組みは「キックスタートプログラム」と呼ばれており、社員にビジネスアイデアを育ててもらうための資金を提供するものです。(文:遠藤由香里)
お金の用途は無制限。会社は「すべて信頼による」
このプログラムにエントリーした社員には、ひとつの箱が届けられます。中にはキャンディとスターバックスのギフトカード、それに1000ドル(約12万円)使用可能なデビットカードが入っています。
注目したいのが、デビットカードの使い道です。お金の用途は指定されておらず、領収書の提出も不要。何を買っても構わないのだそうです。仕事とまったく関係のないものを買ってもチェック機能がないのですが、アドビの広報スタッフは「結局のところすべて信頼によりますね」と述べています。
アドビがこのプログラムで目指すのは、イノベーションに取り組むカルチャーを社内に育むこと。社員がやりたいことを追求できるリソースを提供することが、イノベーションを動機付けるとしています。
このプログラムには社員なら誰でもエントリーでき、すでに数千人が参加。エンジニアでなくても、事業アイデアを持っていなくても構わないそうです。
プログラムには6つのレベルがあり、最終段階を通過するとアイデアをより磨くための資金が会社から提供されます。これまでに生まれた事業アイデアには、「学校の宿題をペーパーレス化する方法」「映像作品の中で画像や音楽を雰囲気・感情と同期させる方法」「GPSを使う体感型ゲーム」などがあるそうです。
グーグルの「20%ルール」は運用されていない?
記事ではこの取組みを、グーグルの「20%ルール」と比較しています。グーグルは勤務時間の5分の1を自由なプロジェクトに使って良いとするものですが、同記事はグーグル経営層や元社員の言葉を挙げて、通常業務が忙しいことから、このルールが実際にはあまり運用されていないと指摘します。
一方、アドビの場合は、プロジェクトには勤務時間を充てても良いし、プライベートな時間で行ってもよいのだそうです。
使途指定がない資金の提供、社員誰もが参加できるハードルの低さ、勤務時間を充ててOKという柔軟性と、かなり太っ腹のアドビの取り組み。
投資に対してどれだけのリターンを得られているのかは気になるところですが、社員の自由な発想を促したい企業、アイデアが生まれる環境を作りたい企業にとっては、興味深い取り組みと言えそうです。
(参照)Adobe gives all of its employees a $1,000 gift card with basically no strings attached (Business Insider)
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