2015年04月29日 08:41 弁護士ドットコム
敵対する少年グループと決闘するため、金属バットや鉄パイプを持って公園に集まったとして、浜松市の暴走族に所属する16~18歳の少年14人が4月中旬、凶器準備集合罪の疑いで書類送検された。
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報道によると、暴走族のリーダーの少年(17)=決闘罪の容疑で逮捕=が昨年12月、自身を中傷する動画をインターネットで公開した高校生(17)に、一対一の「タイマン」のケンカを申し込んだのがきっかけという。
リーダーは暴走族の仲間を呼び寄せ、相手の高校生は地元の遊び仲間を集めたが、凶器を持ってきた暴走族が、素手の高校生をほぼ一方的に暴行する展開になった。高校生グループには多数のケガ人が出たが、警察に被害を申し出たのは1人だけだったという。
今回、静岡県警は、暴走族グループの少年のほぼ全員を摘発した。送検の容疑となった「凶器準備集合罪」は、あまり耳慣れないが、どんな犯罪なのだろうか。刑事事件にくわしい高岡輝征弁護士に聞いた。
「凶器準備集合罪は、
(1)2人以上の者が他人の生命、身体または財産に対して、共同して害を加える目的で集まった場合において
(2)凶器を準備して、またはその準備があることを知って集まった者は
2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処するという犯罪です(刑法208条の2第1項)」
高岡弁護士はこう説明する。どんなケースが想定されているのだろうか。
「1958年に新設されました。当時、暴力団の抗争がたびたび発生しており、殴り込みをかけようとする集団が凶器を準備するなど、世間の人々に不安を抱かせる事態が生じていました。
こうした準備行為に対して、適切に検挙・処罰する規定がなく、抑制できなかったのです。
1960年代半ばからは、学生運動の『過激派』対『機動隊』や、『過激派同士の抗争』にも適用されました。その中で様々な論点が生じ、最高裁の判例もあります(最高裁決定S45・12・3)。
最近では、2012年9月の『関東連合』による六本木クラブ事件(敵対グループ中心格と誤認された被害者が死亡)が耳目を集めました。この事件では、主犯を含む18名が逮捕されました」
しかし、集合した時点では検挙できないことが多いのではないか。つまり、加害行為を本当に抑止できるのか。
「凶器を持って集合した後は、加害行為(暴行、傷害、傷害致死、器物損壊、放火、殺人)へと進展していきます。それでは遅いため、凶器準備集合罪が設けられたのですが、ただちに対応できない場合も多いでしょう。
実際、六本木クラブ事件では、傷害致死などに発展しました」
今回のケースでも、暴行や傷害に発展して、多くのケガ人が出たようだが・・・。
「誰がその集団に入っていたか、共謀や共同実行がどうなされたか、主犯や実行犯は誰か、誰が誰に加害行為をしたかなどについて、捜査は難航します。そのため、凶器準備集合が『切り札』として適用されることがあります。
なお、凶器準備集合は加害行為と併合されて処分されるため、別件逮捕の問題には、実務上なりません」
今回のケースは今後、どのような進展が考えられるのだろうか。
「今回のケースでは、仕返しをおそれて被害届が出せないという背景や、加害集団のメンバーも被害集団のメンバーも、『対相手』および『対内部』の関係で、参加の有無やそれぞれの役割などを話さないという背景が想像されます。
本罪での検挙をきっかけとして、事件の全容が解明され、今後、傷害罪の共謀共同正犯の立件へと進展する可能性が高いでしょう」
高岡弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高岡 輝征(たかおか・てるまさ)弁護士
神奈川県藤沢市出身。湘南高校・明治大学卒。1999から2003年まで検事として名古屋・山形・東京・横浜の各地検に勤務。2004年「大船法律事務所」開業。2012年「弁護士法人プロフェッション」設立。2013年に支店「辻堂法律事務所」、2014年に支店「平塚八重咲町法律事務所」開設 。趣味は旅行、ドライブ、読書。
事務所名:弁護士法人プロフェッション平塚八重咲町法律事務所
事務所URL:http://www.prof-law.com