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<やらせ疑惑>NHK調査委、告発した男性の証言の「信用性」に疑義「合理性を欠く」

2015年04月28日 23:51  弁護士ドットコム

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NHKの報道番組「クローズアップ現代」の「やらせ疑惑」を調べていた同局の調査委員会(委員長:堂元光副会長)は4月28日、やらせを否定しつつも、放送ガイドラインを逸脱する「過剰な演出」や「視聴者に誤解を与える編集」が行われていたと結論づける報告書を公表した。


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これに合わせて、NHKは、取材担当の男性記者を停職3カ月にするなど、関係者15人の懲戒処分を発表した。また、籾井勝人会長など4人が役員報酬の一部を自主返納するという。



一方で、調査委員会は、やらせ行為があったと週刊誌などで告発し、記者から「出家詐欺のブローカー役」を演じるように依頼されたと主張していた男性(A氏)の証言について「合理性を欠いている」と信用性に疑義を呈した。



●「やらせ」を告発したのは、ブローカーと紹介された男性


「やらせがあった」という疑惑が指摘されていたのは、昨年5月14日にクローズアップ現代で放送された「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」という番組だ。多重債務者を出家させ、戸籍上の名前を変えさせたうえで、金融機関から金を借りさせる「出家詐欺」の実態を紹介しつつ、その対策を探る内容だった。



この番組で、A氏は出家詐欺をあっせんする「ブローカー」として紹介された。ところが今年3月になって、A氏は「NHKの記者に依頼されて、架空のブローカー役を演じた」と週刊誌で告白。4月下旬には、放送倫理・番組向上機構(BPO)に人権侵害を申し立てるなど、波紋を広げていた。



しかし、調査委員会は今回、「過剰な演出」を認めながらも、「やらせはなかった」と結論づけた。そのような判断に至った背景として、A氏の証言の信用性に疑問が投げられた点があげられる。



●「掛け合いを依頼することはあまりにも不自然だ」


報告書によると、記者とA氏は2013年10月ごろ、番組で「多重債務者」とされた男性の紹介で会ったという。その半年後の撮影当日、A氏は「記者にホテルのカフェに連れて行かれ、ブローカーのような掛け合いをしてほしいと依頼された」と主張している。



しかし、記者とA氏は初めて会ってから、連絡をとっていなかった。報告書はこの点に触れながら、「半年前に1度しか会ったことのない相手に、撮影当日になって、掛け合いを依頼することはあまりにも不自然だ」と疑問を呈している。



また、このときの状況について、A氏は「NHKの記者だとは知らなかった」「何のためにそのような掛け合いをするかの説明は一切なかった」と説明している。だが、報告書は「どこの誰かもわからない相手から、何のための掛け合いかまったく説明もないまま依頼され、それに応じたというものであり、合理性を欠いている」と断じ、やらせがあったというA氏の主張を認めなかった。



●「A氏の主張は受け入れられない」


また、A氏は、調査委員会の聞き取りに対して「撮影した映像が何に使われるかについて事前に一切説明を受けていない」「NHKの番組取材であることや、テレビで放映されることすら知らなかった」と説明しているという。



ところが、調査委員会が撮影当日の映像素材を調べたところ、記者が「NHKの◯◯といいます」と名乗り、A氏が「どうぞ」とイスをすすめるシーンが収録されていた。こうしたことから、報告書は「少なくともこの時点で、NHKの番組取材であることや、目の前にいるのがNHKの職員であることを認識したはずである」と指摘している。



さらに、撮影当日に使ったカメラなどの機材や機材ケースには、「NHK大阪報道」のステッカーが貼られていたという。また、記者と一緒にA氏にインタビューしたディレクターは、「NHK」とプリントされた職員証を首にかけていた。このような状況から、報告書は「撮影がNHKであることは外形的にも明らかだった」「A氏の主張は受け入れられない」という見解を示している。



NHKの調査委員会の最終報告書は、同局のウェブサイトで全文を読むことができる。


http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/cyousaiinkai/pdf/150428_houkokusyo.pdf


(弁護士ドットコムニュース)