2015年04月28日 20:41 弁護士ドットコム
日本音楽著作権協会(JASRAC)がテレビ局などと結んでいる契約方法が、独占禁止法違反(私的独占)にあたるかどうかをめぐって争われた裁判で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は28日、JASRACの行為には「他の事業者の市場参入を著しく困難にする効果がある」と認める判決を下した。
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この最高裁判決によって、JASRACと放送事業者が結んでいる「包括契約」が、独占禁止法の禁止する「私的独占」にあたるかどうかを、公正取引委員会(公取委)があらためて審判をすることになった。
最高裁で議論されていたポイントは、JASRACの行為が「他の事業者を排除しているかどうか」だった。これは「私的独占」にあたるかどうか判断するときの要件のひとつだ。
最高裁判決はこの点について、「他の事業者の市場参入を著しく困難にする効果がある」としたうえで、特段の事情のない限り「正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性があると解すべき」だと判断した。
そして、今後行われる公取委の審判では、その「特段の事情」があるかどうかや、JASRACの行為が「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものに該当するかなど「私的独占」のほかの要件が、審理の対象になるとした。
JASRACとテレビ・ラジオ局が結んでいる「包括契約」は、放送事業収入の1.5%を払う代わりに、JASRACの管理している曲を自由に使えるという内容だ。
こうしたJASRACの包括契約をめぐっては、公取委がいったん2009年、イエローカードである「排除措置命令」を出した。ところが、JASRACの不服申し立てが認められ、2012年に排除措置命令を取り消す審決が出た。
そこで、この審決について、JASRACと競合する著作権管理会社のイーライセンス(東京)が不服だとして裁判を起こした。1審の東京高裁は2013年11月に「審決を取り消す」という判決を出したが、公取委とJASRACが最高裁に上告していた。
イーライセンス代理人の越知保見弁護士は、判決後に開いた記者会見で「最高裁判決は、高裁判決よりも踏み込んだ内容となっていて、JASRAC側が争う余地はより少なくなった。最高裁判決にしたがう形の審決が、早期に出されることを期待します」と話した。
また、イーライセンスは判決を受けて「公平公正な競争市場の早期形成に向け、一般社団法人日本音楽著作権協会が速やかに対処されること願っております」とするコメントを発表した。
一方のJASRACは「本件で問題とされた使用料徴収方法が、大量の著作物の円滑な利用と適正な著作権保護とを効率的に両立させる合理的なものであって、諸外国において同様の方法が広く採用されていることからも明らかなように、私的独占(独占禁止法3条違反)に該当するものではないことを引き続き主張してまいります」とするコメントを発表した。
公取委は「所要の手続きを適切に行ってまいりたい」とコメントした。
(弁護士ドットコムニュース)