この2人は初期から現在における嵐の音楽的な変化について、指摘を重ねる。
柴氏が初期の方向性はブラックコンテンポラリー、特にファンクを意識していると言えば、矢野氏も「『A・RA・SHI』は、イントロがもろファンクだし、ジャニーズの真ん中をやるんだという方向性を示している曲」だと述べ、ジャニーズが長らく紡いできたブラックミュージックの系譜を受け継ぐぞという覚悟が見えると述べる。
さらに、初期で重要な曲として矢野氏は「a Day in Our Life」を挙げ、ジャニーズ事務所の先輩である少年隊の「ABC」がサンプリングされており、先輩の曲をカバーするジャニーズ的伝統をヒップホップ流のサンプリングで現代的にアレンジした、そしてそこにはリスペクトが込められていると語る。
■2000年代後半の嵐は「COOL & SOUL」がカギ 一方で、00年代後半でカギとなる曲として柴氏が挙げるのが「COOL & SOUL」(アルバム『ARASHIC』収録)だ。「クリーン・パンディットみたいなストリングスのサンプリングが超カッコイイ」という絶賛とともに、櫻井さんのラップの中に出てくる、「4つ前のアルバムに話は遡る」という詞を取り上げる。実はその「4つ前のアルバム」に当てはまるのが、セカンドアルバム『HERE WE GO!』であり、そのオープニング曲「Theme of ARASHI」で使われていた「太陽光」や「近づくスロー」といったフレーズを、「COOL & SOUL」で再び使っていると指摘する。
これは、矢野氏に言わせれば、自己言及しながら、自ら連続性を見せていく「ヒップホップ的な遊び方」なのだという。そしてこの歌詞に、「自ら歴史を紡いで現在につなげよう」という意思があってもおかしくないと解説する。