若者世代にとって、自分のキャリアをどう築いていくかは一大関心事。専門分野をこれと決めてしまい、会社から別のことを求められて「勝手に振り回さないでくれよ!」と思う人もいるかもしれません。
色々な分野の仕事に転職する人も「落ち着かない」と否定的な評価に。しかし米グーグルの上級副社長で人事部門を担当するラースロー・ボック氏は、これとはまるで対照的な考え方です。彼は30歳頃までは、専門を決めずにいることを勧めています。
「いろんな経験をしていれば、変わった存在でいられるのです。ユニークな視点を提供できることが、あなたの強みになります。素晴らしい仕事は、たいてい分野と分野の交差点で偶然起こるものです。ある専門分野の奥深くではないのです」
ありふれた人ではダメ「いろんな会社で働いて」
キャリアマネジメントの方法として一般的に勧められるのは、「専門分野を持つこと」。ひとつの分野で深く、それ以外は浅く広くという「T字型モデル」と呼ばれるものです。
この考えでは、社会人になりたての最初の10年間は取り組むことを絞りこみ、10年経ってから活躍の幅を広げていくことが奨励されます。しかしボック氏は「私はまったく違う考えです」と言います。
「キャリアの最初の10年間は様々なことに挑戦してください。考え過ぎてはいけません。実験しましょう。いろんな会社で働いてみてください。スタートアップでも大企業でも。有名企業でも、誰も聞いたこともないような会社でも。NPOで働くのも良いでしょう」
そうすることで、専門だけに取り組んできた人では得られないような「幅」を得ることができるのだと言います。30歳頃になると「この道一筋」の人と競争することになりますが、「彼らはありふれているから」と歯牙にもかけません。
6万人を入社させた経験「専門分野は30代から」
グーグル社といえば、「働きたい会社ランキング」では上位の常連企業です。無料のカフェテリアなど充実した職場環境や、エンジニアが勤務時間を業務外のことに使える「20%ルール」で知られています。
同社で働きたいと願う人は後を断たず、採用担当に送られてくる履歴書の数は1年で200万通に上るのだそうです。
ボック氏が人事担当の上級副社長に就任したのは2006年のこと。就任から現在までにグーグルの社員は6000人から6万人へと10倍に増加しました。数多くの社員や入社希望者を見てきた末に、ボック氏は「20代のうちは専門を決めない方が良い」という結論に至ったようです。
20代は幅広い経験とユニークな視点、30代は専門分野、40代はこれまでの成果を刈り取る時期だとします。「経営層にいるかもしれないし、起業しているかもしれませんね」
そんな彼は新著「Work Rules!」を出版しました。以上のコメントは出版を記念して行われた対談の内容です。対談の音声データは米ビジネスインサイダーにて掲載されていますので、興味のある方は聞いてみてはいかがでしょうか。(文:遠藤由香里)
(参照)Google HR boss shares his best advice for succeeding in today's workplace (Business Insider)
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