バーバー・モータースポーツパークで開催されているベライゾン・インディカー・シリーズ第4戦。26日に行われた決勝レースは、ジョセフ・ニューガーデン(CFHレーシング)がキャリア55戦目で初優勝を飾った。佐藤琢磨(AJフォイト)は、レース中盤にウィル・パワーとの接触もあり、17位でレースを終えている。
空は快晴。気温が29度まで上がった好天下で90周のレースはスタートした。
ポールシッターのエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)はトップを保ち、その後方ではジョセフ・ニューガーデンが予選5位から一気に2番手までジャンプアップした。
1周目を終えてのオーダーは、カストロネベス、ニューガーデン、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、サイモン・ペジナウ(チーム・ペンスキー)、セバスチャン・ブルデー(KVSHレーシング)、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)、グラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)……となっていた。
ユーズドレッドでスタートし、ペースの上がらなかったディクソンが15周という早いタイミングでピットインし、ブラックタイヤに換えてコースに戻った。彼のチームメイトのトニー・カナーン、後方スタートだったファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)、パワーも早目のピットストップを行った。
ピットアウト直後のパワーは、10番手を走っていた佐藤琢磨(AJフォイト)にぶつかった。完全にパワー、そして彼のチームの不注意による接触だった。それでもパワーはグラベルに飛び出しながらも走り続けることができた。不運なのは琢磨で、コース上にストップし、エンジンストール。フロントウイングにもダメージを受けてた彼は最後尾近くまで後退を余儀なくされた。
このイエローが出る直前にトップ争いをしていたカストロネベス、ニューガーデン、レイホール、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)はピットインを済ませており、ピットしていなかった上位陣は順位を下げた。その結果、全員が1回以上のピット・ストップを終え、24周目にリスタートが切られた時点では、ニューガーデン(ブラックタイヤ)がトップ、2番手はカストロネベス(ブラック)とトップが逆転しており、3番手はレイホール(ブラック)、4番手はヒンチクリフ(レッド・タイヤ)となっていた。パワー(レッド)は5番手まで順位を上げていたが、琢磨にヒットしたペナルティとしてグリーンフラッグ後にドライブスルーペナルティを受け、最後尾の23位まで後退した。
ニューガーデンはブラック装着でのセカンドスティントが速かったが、34周目に出されたフルコースコーション2回目にピットインしなかったレイホールがトップに躍り出る。
39周目にリスタートが切られた時、ニューガーデンの順位は11番手にまで後退していたが、彼が90周のゴールまでにもう1回のピットストップを行えば済むところ、レイホールらは2回のピットストップが必要だった。ニューガーデンと同じ作戦だったのはカストロネベス、ディクソン、ハンター-レイといった面々だった。
トップに立ったレイホールは47周目に2回目のピット作業を受け、17番手でコースに復帰。そこからコース上で9台をパスして2位フィニッシュを達成した。その走りは凄まじく、 残り5周で5秒差があったディクソンを最終ラップでパスし、ファンをおおいに沸かせた。
レイホールの速さを支えていたのは、1回多くしたピットストップだった。最終スティントを短くできたことで、残しておいた新品のレッドタイヤが効果を発揮した。ライバルたちは1回ピットストップが少ない分、レッドでのスティントが長くなっており、よりグリップの高いタイヤを履くレイホールに対抗できなかった。マシンの仕上がりの良さと作戦力で勝ち取った2位だった。
レイホールが届かなかったのはニューガーデンだけ。1回目のピットストップでチーム・ペンスキーをピット作業で打ち破ってトップを奪い、そこからは正攻法の作戦で堂々とゴールを目指した。
レースを通じてニューガーデンのペースは安定していた。レッドタイヤでもブラックタイヤでも速く、63周目に自らの最後のピットストップを行うと、2位以下に6秒もの差を持っていた。ここでつけた差の大きさが彼に余裕を産み、ペースをコントロールする走りだったからこそタイヤを労ることも可能だった。そして、ミスのなくゴールへとマシンを運ぶ仕事をキッチリとこなした。サラ・フィッシャー・ハートマン・レーシングとエド・カーペンター・レーシングの合併は大成功だったということ。1年目にして勝利を記録した。ニューガーデンはデビュー4年目の初勝利となった。
3位はディクソン。4位は最後尾まで一度下がったパワーが手に入れた。前半の2スティントでレッドタイヤに見切りをつけた彼らは、後半をブラックタイヤで戦うことにした。それがレース終盤のポジションゲインに繋がった。63周目の最後のピットストップを終えた時には15位だったパワーだが、ハンター-レイ、カストロネベスらをパスしての4位フィニッシュを達成した。
そのパワーに激突された佐藤琢磨(AJ・フォイト・レーシング)は予選20位から17位でのゴールとなった。パワーやハンター-レイは琢磨とほぼ同じポジションをレース中に走っていたドライバーたちだ。彼らが上位でフィニッシュし、琢磨がそうできなかったのは、チームの判断、あるいは作戦が幾つかの場面で正しくなかったためだった。マシンセッティングでの苦悩が続いているのも確かだが、AJフォイト・レーシングはその他の部分で改善を図る必要がある。第5戦までのインターバルで一度冷静になり、体制を立て直すことを目指すべきだろう。