2015年04月26日 11:21 弁護士ドットコム
離婚を決めた夫婦を悩ます「お金」と「子ども」の問題。慰謝料・親権・養育費の3大テーマだけでなく、ある程度のお金を持った夫婦がもめる「財産分与」も厄介な問題。財産分与といっても、不動産、家具・家財、預貯金、有価証券など、その内訳は多種多様だ。
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弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、そんな財産分与のなかでも「貯蓄型生命保険」をめぐる相談がよく寄せられている。代表的な相談例を紹介したい。
・A子さんからの相談
「夫に隠れて、結婚後に加入した生命保険のことは、黙っていればバレませんか?」
・B子さんからの相談
「夫が結婚後に加入した、夫名義の生命保険の『受取人』を私から子どもに変更して欲しい。それが叶わないならば、解約して、その半分を現金でもらいたい」
・C男さんからの相談
「婚姻前に加入した生命保険の『解約返戻金』の半分を寄越せと言われている。あと1年で満期になるので、現時点で解約するのは、もったいないし、それだけの現金が手元にない。満期を迎える1年後に支払うことはできるのか?」
といった具合だ。A子さん、B子さん、C男さんはどうしたら良いのだろうか? 離婚問題にくわしい打越さく良弁護士に話を聞いた。
はじめに打越弁護士は、A子さんを次のようにいさめた。
「婚姻中に形成した財産は、相続財産などの『特有財産』以外は、すべて財産分与の対象になります。
A子さんが黙っていれば、生命保険は隠せるかもしれません。しかし、家裁実務上、自分名義の財産を積極的に開示するよう求められていますから、決してフェアではありません。
また、実は夫が、A子さんの生命保険を知っている可能性もあります。その場合、A子さんが裁判中にしれっと『他に財産はありません』と言った後、夫から『隠している!』と指摘されてしまったら、裁判所は『A子さんは嘘をつく』『そんなA子さんの主張は信用性がない』と思われてしまいかねません。隠さずに開示すべきです」
また、A子さんだけでなく、B子さんの認識にも甘さがあるようだ。
「受取人を子どもに変更してもらっても、離婚後に受取人を変更されない保証はありませんね。夫が約束通り、受取人を子どものままにしておいてくれるのか心配だったら、破綻時(おおむね別居時)の『解約返戻金残高』を財産分与の対象として計上すると良いでしょう」
では、C男さんは、どうだろうか?
「婚姻前から加入している生命保険の解約返戻金の半分を請求されていますが、まず、財産分与の対象になるのは、婚姻時から破綻時までの解約返戻金です。独身時代に支払った分は、その対象に含まれません。
そこで、C男さんのようなケースでは、破綻時の解約返戻金と婚姻時の解約返戻金の差額を計上することが多いですね。
『解約返戻金』は、解約しないまま現金等で相当額を分与することがほとんどです。ですが、現金がなければ、1年後に払うと交渉してみてはどうでしょうか。『公正証書』を作成すれば、回収可能性が確実になりますから、妻が応じてくれるかもしれません」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
打越 さく良(うちこし・さくら)弁護士
離婚、DV、親子など家族の問題、セクハラ、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野を専門とする。第二東京弁護士会所属、日弁連両性の平等委員会・家事法制委員会委員。夫婦別姓訴訟弁護団事務局長。
事務所名:さかきばら法律事務所
事務所URL:http://sakakibara-law.com/