2015年04月25日 19:31 弁護士ドットコム
「憲法が同性婚を禁止しているという解釈は成り立ちません」——。憲法学者の木村草太・首都大学東京准教授が4月25日、東京都内で開かれた「同性婚」を考えるシンポジウムに登壇し、「憲法24条が同性婚を禁止しているという説(同性婚禁止説)」をバッサリと切り捨てた。
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木村さんは「同性婚禁止説」と「同性婚合憲説」を比較・分析した結果として、「同性婚禁止説は、説得力が5分の1、憲法条文との整合性は4分の1しかない。条文の理念・趣旨との整合性は比べるべくもない。その一方で『お笑い度』は4.5倍ぐらいあります」と話した。
どうしたら、「お笑い」になるのだろうか?
憲法24条には「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と書かれている。
木村さんはまず、「両性」が何を意味するのかがポイントだと話す。
この「両性」が、男女だけでなく男男・女女も含むと解釈すれば、同性婚は合憲だ。むしろ、「同性婚を保護しないと違憲」ということになる。これがひとつめの解釈だ。
一方で、両性が「男女だけ」を指すと解釈した場合には、どうだろうか?
その場合、問題となってくるのが「婚姻」という言葉の指す意味だ。
もし、婚姻の意味が「異性婚だけ」だと考えるなら、同性婚は婚姻に含まれないことになる。そうすると、憲法24条は同性婚について何も言っていないことになる。それは、つまり、「同性婚は憲法で禁止されていない」ということだという。
それでは、婚姻が「異性婚だけでなく、同性婚も含む」と考えるとどうか?
「両性が『男女だけ』なのに、婚姻に同性婚を含むということはあり得ない。同性婚が男女の合意で成り立つなんて、そんなことは意味不明で、アホじゃないかという話になります」(木村さん)
そうなると結局、憲法24条の文言解釈からは、(1)憲法は同性婚について何も語っていないと考えるか、あるいは(2)男男・女女の同性婚も憲法上保護されると考えるか。このどちらかの説しか「存在し得ない」のだという。
木村さんは「このように、同性婚禁止説は条文の文言解釈のレベルでは成り立ちません。無理です。また、同性婚禁止説を憲法24条の趣旨・目的から導くのはもっと無理です」として、「同性婚禁止説は今日でおしまい」と、引導を渡していた。
ただ、現実問題として、日本で同性婚が公的に認められたケースはない。また民法の解釈では、「夫」「妻」「夫婦」という言葉が使われていることなどもあり、「同性婚は想定されない」という考え方が一般的だという。
同性婚を認めないそうした制度運用は「憲法違反」と言えないのだろうか?
シンポジウムを主催したLGBT支援法律家ネットワークの山下敏雅弁護士から「同性婚を認めないのは違憲だという裁判を起こしたらどういう結論になりますか」と尋ねられると、木村さんは「むしろ、そういう違憲訴訟がいままで起きなかったことが不思議なぐらいです。訴訟が起きたら、私が『違憲だ』という意見書を書きますよ」と請け負っていた。
山下弁護士は現在、日本弁護士連合会(日弁連)から政府に対して、「同性婚を認める法律を作るように」という勧告を出してもらうべく、人権救済申立の準備をしていると話していた。
※人権救済申立についてはLGBT支援法律家ネットワークのウェブサイト http://lgbt.sakura.ne.jp/lgbt/humanrights/ を参照。
(取材・渡邉一樹)
(弁護士ドットコムニュース)