ホンダが手がける小型ビジネスジェット旅客機、HondaJetの日本初披露が、羽田空港で行われた。
HondaJetは乗員1名+乗客5名の計6名が搭乗できる小型ジェット旅客機。2003年にコンセプト試作機が飛行、2010年には量産型の初号機を初飛行させることに成功している。同機はこれまで、映像等では再三公開されてきたものの、開発拠点となっているホンダエアクラフトカンパニーはアメリカのノースカロライナ州にあるため、日本に飛来するのは今回が初である。
HondaJetは14時20分過ぎ、羽田空港のC滑走路の着陸。その勇姿を日本で初披露した。HondaJetが上空に姿を表すと、驚くのはその小ささだった。C滑走路はそれまでボーイング747や787など、大型機が相次いで離着陸していたため、HondaJetの小ささが非常に際立っていた。小さいが故に、着陸後に滑走路を疾走していく速度は、非常に早く見える。
HondaJetはその後格納庫へ移動。その格納庫では、本田技研工業の伊東孝紳社長、ホンダエアクラフトカンパニーの藤野道格社長が出席しての、記者会見が行われた。会見で伊東社長は、「HondaJetは創業者の本田宗一郎の、そしてその想いを受け継いだ我々ホンダマンの夢でした」と挨拶。日本初披露の喜びを語った。このHondaJetの開発は、1986年から始められ、1997年に基本コンセプトが出来上がったということも明らかにしている。
HondaJetの特徴は、なんと言ってもそのエンジンの取り付け位置にある。従来のジェット機の場合、翼の下もしくは機体後部にエンジンを取り付けるのが一般的だった。しかしHondaJetは、エンジンを両翼の上部に搭載。これにより、高い燃費性能と、速度向上を実現しているという。さらに、キャビンはF1と同じくカーボンコンポジットによるモノコック構造を採用。これによっても気流の乱れを抑え、性能向上に寄与しているという。また、試験飛行時には、テレメトリーシステムも活用されたようだ。
なおこの機体のデザインは、「フェラガモのハイヒール」からインスピレーションを受けたものだという。ホンダエアクラフトの藤野社長は、「若い頃は計算を先にしていたが、経験を積んでくると、先にインスピレーションが来るようになる。美しいモノは素晴らしいですから」と語る。確かに、レッドブルF1のエイドリアン・ニューウェイも、まずは鉛筆を使ってF1マシンをデザインしていたと言われるが、それと似たようなことが、このHondaJetでも行われていたということだろう。
こうして開発されたHondaJet。すでにアメリカでは、購入者を対象にした試乗会を実施しており、「まるでロケットのような上昇だ!」「エンジン音は静かだ!」など、これまでにない評価が寄せられているよいう。
今回日本に初飛来したHondaJet。今後は仙台、神戸、熊本、岡山、成田などで一般公開が行われ、その後欧州を周遊するという。まさにワールドツアーだ。その最初に日本を選んだのも、ホンダの希望だったという。
ちなみにHondaJetは、発表当時ホンダF1チームのドライバーを務めていたジェンソン・バトンがその第1号機を予約していた。しかし、その後ホンダF1チームがF1撤退したことにより、HondaJetの購入契約は破棄されていたという。そのため、現時点でHondaJetの1号機を予約している人物が誰であるかは非公開であり、バトンやフェルナンド・アロンソが購入するかどうかについても、同様に非公開であるという。