せっかく入社した新人をふるい落とすような「ブラック研修」が問題視される中、若手社員の定着を図る手厚い研修を行う会社が増えているという。21日の「おはよう日本」(NHK)では、ある会社の新入社員研修の様子を紹介していた。
全国展開するメガネチェーンのOWNDAYS(オンデーズ)には、自分の上司を選ぶ「選挙制度」がある。店長やエリアマネージャーを選挙で決めており、投票には新人も参加できる。これにより自分自身の将来像を描いてもらい、やる気を引き出しているという。
費用はかかるが「辞める人が少なくなれば割に合う」
同社はかつて経営危機に陥り、社員の半分が退職。そこで若手社員にとどまってもらおうと、選挙の制度を取り入れた。立候補した社員は研修中の新人のもとを訪れて投票を呼び掛け、その場で新人からキャリアに対する質問にも答えていた。
選挙結果が発表されるステージには光の演出が用いられるなど、一種のショーのよう。選挙戦を見ていた新人からは「舞台にあがった方々を見て、自分もこういった形になりたいと心から思えた。本当にずっとここで頑張りたい」という声があがっていた。
実際、この制度を導入してから新人の離職率が5%にまで減少。社長の田中修治氏は、入社当初のケアの重要性を強調した。
「その会社に長く勤めるか、それともすぐ辞めてしまうかは、会社に入って最初にどういう体験をするかがすごく大事なのではないか。入り口で自分の会社の良さを知ってもらって仕事にプライドを持てれば、その後長く続けていける」
スタジオからは「企業にとって負担になっていないか?」との声があがったが、解説を行った社会部記者によると、この会社が退職者の補充に人材紹介会社へ1人当たり100万円を支払っていたことを考えると「辞める人が少なくなれば、あれほどのイベントを行っても割に合う」ということだ。
背景に「第二新卒の転職市場」の活性化あり
各社が新人研修に力を入れる背景には、退職3年以内の「第二新卒」が売り手市場になっていることが関係している。3年以内の大卒離職率は、2009年卒の28.8%から、2011年卒には32.4%にまで増え、景気の回復で「今後さらに増える見通し」だという。
あわせて、「第二新卒向けの転職説明会」は盛況。説明会主催会社の担当者は「完全に売り手市場。争奪戦が非常に激しい競争になっている」と語る。転職市場が活性化すれば、辞めても怖くないと考える若手社員が増える。
このような流れの中で「新入社員をつなぎ止めよう」と、新入社員研修も進化してきているようだ。番組内でも民間のシンクタンクの調査結果として「企業が研修にかける費用は増加傾向」と紹介していた。
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