4月20日に塩崎恭久厚労相が経団連に提出した「『夏の生活スタイル変革』に対する要望書」が話題になっている。長時間労働の削減を図るために、今夏に国家公務員が試みる「朝型勤務」を民間企業も導入するように求めているのだ。
ツイッターには、早出しても帰宅時間を前倒しすることは難しいと考え、「働く時間増えるだけだろどーせ」など長時間労働は減らないと悲観する声が多い。だが朝型勤務への懸念は、それだけではないようだ。
社員だけでなく主婦の負担も増える?
ブログ「おばちゃんの気になる噂」の4月21日付けエントリーは、朝型勤務の導入に伴う主婦への影響を挙げている。メリットとしてあげられているのは、次の3つだ。
・家族が早くに出勤するので、朝の時間にゆとりが出る
・夜はバラバラだった食事の時間が一緒に食事ができるようになる
・家族で会話する時間が増える
夫が朝早く働きに出れば、主婦は午前中の時間に余裕が生まれる。夫が早く帰宅すれば、家族団らんで過ごす時間も増える。その一方で、
・早朝に出ていく家族のために早起きをしないといけない
というデメリットもありそうだ。パート勤務をしている場合、パート先の終業時間が変わらなければ、夫が早く帰ってくる夕飯の支度などがより忙しくなってしまう。
夫の通勤時間についても思いを寄せ、通勤に時間のかかる人は「始発電車でも、仕事に間に合わない人も、出てくるかもしれませんわよ」としている。
子育て中の共働き家庭にも、影響が出そうだ。TBSのニュース動画では、朝型勤務導入による保育所の問題に触れている。出勤時間が早くなると、子どもを受け入れる保育所もより早く開ける必要が出てくるのだ。
「女性の働きやすさ」が目的なのに・・・
都心に通勤する親の多い千葉県の保育所の園長は、「うちはもう、これ以上早くは…」と困惑の表情を浮かべ、こうコメントしている。
「(現在の開園時間の)6時45分でも、通勤に1時間以上かかっている保育士さんは、家を5時半に出て6時15分までには来ている。朝もいろいろ支度もあるので、これ以上(開園の前倒し)は難しいですね」
子どもを預けにきた母親も、「子どもも早く起きないといけなくなって、だからといって夜そんなに早く寝かせられないので、ちょっと困ります」と不安げだ。
保育所の問題だけではない。前出のブログエントリーでは、子どもが小学生の場合は、「子供が登校するよりも先に、親が出勤しないといけない」ことに触れ、
「親が早起きをして出勤するということは、子供の生活パターンも見直さないといけないって事でしょ」
と、子どもへも影響を及ぼすと釘を刺している。
政府の要望書は、朝型勤務のねらいとして「女性や高齢者が働きやすく、また、意欲と能力のある者が活躍しやすい職場環境を作ることで、労働生産性を上げて成長を持続させること」としている。
長時間労働を減らすという方向性自体は歓迎したいが、実際に導入するとなると、思わぬ場所に影響が出ることになる。特に保育の問題を両立して解決しなければ、かえって子育て中の女性が働きにくくなることは確実だ。
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