2015年04月22日 18:51 弁護士ドットコム
3月中旬に閣議決定し、政府が今国会での成立を目指している刑事訴訟法等改正案。一定の犯罪について警察や検察の取り調べの「録音・録画(可視化)」を義務づける一方で、他人の犯罪を明かす見返りに刑事処分を軽くする「司法取引」の導入を盛り込むなど、刑事司法の転換点となりうる法案だ。
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この法案については、冤罪防止の観点から求められていた「取り調べの可視化」が導入されるのにもかかわらず、当の冤罪被害者から、反対の声があがっている。そんな当事者たちによる集会「問題だらけの『刑事訴訟法等改正案』 なぜ冤罪被害者は、反対するのか?!」が4月22日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で開かれた。
集会には「袴田事件」の袴田巌さんの姉・秀子さん、「布川事件」で再審無罪が確定した桜井昌司さん、映画「それでもボクはやってない」のモデルにもなった痴漢冤罪被害者の矢田部孝司さんらが登壇した。
矢田部さんは2000年12月、全く身に覚えのない痴漢容疑で逮捕・起訴され、1審で有罪判決を受けたが、2審で無罪を言い渡された。その矢田部さんはこの日、「取り調べの一部可視化ではなく、全面的な可視化をしてほしいと政治家の先生に言いたい」と語気を強めて話した。
可視化は、警察の取り調べは裁判員裁判の対象事件、検察についてはさらに独自に捜査する事件でのみ、義務化される。すべての刑事事件の2~3%にすぎず、痴漢事件は、可視化の対象に含まれない。
しかし、矢田部さんは、痴漢事件でも可視化が必要な理由を、自身の経験をまじえて語った。
「(警察署に連れて行かれると)6畳ぐらいの薄暗い部屋に入れられ、突然入ってきた色眼鏡をかけた、いがぐり頭の刑事に『お前がやったんだろ!』と調書を突きつけられ、いきなり取り調べが始まった。自分がどれほど『やっていない』と言っても、調書には書いてくれません。
刑事はすごい形相で怒っていて、もしこれが自分の子供や、若い人であれば、耐えられずに自白してしまうのではないかと思った。実際の供述調書というのは、自分が言ったことがそのまま書かれているわけではない。調書は当てにならないからこそ、取り調べの全面可視化が必要だと強く訴えたい」
(弁護士ドットコムニュース)