東京・大田区平和島の倉庫街にオフィスを構える株式会社デファクトスタンダードは、ブランド品の宅配買取サービス「Brandear(ブランディア)」を展開する会社だ。今年2月には、のべ利用者が100万人を突破し、売上成長率は前期比150%に達した。
IT時代の新サービスに見えるが、事業の成長を支えたのは創業メンバーの熱心な仕事ぶりと、日本企業らしい地道な「業務の仕組み化の徹底」だったという。広報の菅原亜美さんに内情をレポートしてもらった。
ノウハウを個人で溜め込まず「マニュアル」に落とし込む
当社のオフィスには、アルバイトスタッフを含め500人を超える従業員が働いており、毎日1000箱の商品がお客様から送られてきます。しかし事業を始めた2004年当時は、従業員はわずか3人。届くダンボールの数も日に数箱からのスタートでした。
創業メンバーは週末には安居酒屋で打ち上げし、翌週からオフィスにほぼ泊まり込みをして夢を追ったそうです。お酒が入ると当時のエピソードを懐かしそうに話す彼らの顔を見ると、会社や仕事が本当に好きなんだなと感じ、うらやましい気持ちにもなります。
当社が成長した背景を考えるとき、がむしゃらの努力だけでなく、「業務の仕組み化の徹底」を図ったことも欠かせません。当社では担当者が手探りで行っていた業務を分解し、誰もが行えるようにします。例えばブランド品の買取には査定業務が欠かせませんが、これを専門知識のなかった主婦でも行えるようにしています。
マーケティング部のアルバイトとして働き始めた私は、パソコンをほとんど触ったことがありませんでしたが、いまでは他のスタッフとともにExcelを使いこなして業務を行っています。それが可能になったのは、お互いの知識やノウハウを個人で溜め込まずに、徹底的にマニュアルに落とし込んできたことが非常に大きいといえます。
マニュアルには数値の見方やSEOのノウハウ、メルマガの作り方やコンテンツ企画まで、さまざまなことが盛り込まれています。もちろん、仕事のやり方を変えて元のマニュアルを壊すことも厭いません。こうした何人もの未経験者を同時に育成する仕組化により、今では30名のアルバイトがマーケティング業務を担っています。
在庫管理システムも「自前主義」で作り上げる
創業メンバーたちが節約しながら事業を伸ばしてきた当社には、ないものは自力で生み出す「自前主義」が根付いています。商品の撮影ブースやデスク、作業に必要な備品は、社員がダンボールや板で手作りするときもあります。
社長の尾嶋も必要以上にオフィスにお金をかけることに関心がなく、社員と同じフロアの同じデスクで仕事をしています。おかげで社内ではケチだと評判ですが、その徹底ぶりがオリジナルを自前で生み出す考え方が根付く原点となっています。
3か月に1度の棚卸しも、かつては商品リストを手に2人1組で読み上げながら行っていました。しかし今では失敗と改修を重ねて自前の「在庫管理システム」を作り上げ、20万点以上の在庫をバーコードで管理しています。
このシステムのおかげで、棚卸し作業は以前の半分の時間で終わるようになりました。完成したとき、以前の苦労を知る私は感激で大はしゃぎしたのを覚えています。
また当社には、仕組み化にとどまらず「変化を恐れない」という文化もあります。事業の成長に合わせて、何度も引っ越しやスペースの拡張を繰り返しており、今年5月にも事務所の移転を控えていますが、そのたびに在庫スペースのレイアウトやルールを臨機応変に見直しています。
「一度に寄付した洋服数」でギネス世界記録に
実は当社は、「一度に寄付した洋服の数」のギネス世界記録(12万点)を持っています。お客様からお送りいただいたお品物のうち「まだ着ることはできるけど販売できないもの」を、フィリピンへ定期的に寄付しているのです。
2014年7月には世田谷区立東深沢中学校の生徒さんの協力を得て、衣類を詰めた1000箱のダンボールを使い、当社の猫のキャラクター「ブランニャ」と日本・フィリピンの国旗のダンボールアートを作りました。
私自身、アルバイトから5年の年月を経て、この1月に正社員になると同時に人事担当に任命されました。今後もマーケティングで培ってきた集客方法を存分に活かし、自分にしかできない人事を日々模索していきます。
【プロフィール】デファクトスタンダード 広報・経営企画室 菅原 亜美:1986年生まれ。2010年にアルバイトスタッフとして働き始め、マーケティングを5年間担当した後、社員として人事・広報を担当する。ベンチャー企業の魅力を日々PRする「なでしこ広報会」(主宰:栗田 朋一・ 東京PRアカデミー代表)に参加している。
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