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国宝に「油のような液体」かけられる被害が続出・・・どんな「犯罪」になるのか?

2015年04月21日 11:41  弁護士ドットコム

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国宝や重要文化財などに、油のような液体がかけられる被害があいついでいる。同種の被害が全国の寺社に広がっており、報道によると、4月16日までに確認されただけで、計9府県、33カ所におよんでいるという。


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奈良県の東大寺では、国宝の大仏殿や南大門にある仏像の台座などに油のシミのような跡が付いていた。京都府の二条城や東寺、千葉県の成田山新勝寺でも被害が見つかっている。



現場の状況から、何者かがペットボトルやスプレーを使って、液体をふりまいたとみられる寺社もあり、警察は文化財保護法違反などの疑いで捜査を進めているという。国宝や重要文化財に液体をかけた場合、法的にはどんな問題があるのだろうか。大川一夫弁護士に聞いた。



●モノの機能を阻害すれば「器物損壊罪」にあたる


「まず、被害にあったのが『国宝』や『重要文化財』ということを考慮せずに考えたいと思います。



他人の『モノ』を損壊した場合、器物損壊罪にあたります(刑法261条)。罰則は、3年以下の懲役また30万円以下の罰金もしくは科料です」



一般的に「損壊」というと、「物理的にモノを壊す」というイメージがあるが、今回のケースのように液体をかけた場合も、「器物損壊」とされるのだろうか。



「モノの『機能』を阻害すれば、物理的に壊したときと、事実上は同じです。油のように何らかの油をふりかけて、簡単に取れない場合は、モノの機能を阻害しているといえるので、『損壊』にあたります。



判例では、飲食店の食器に放尿することも『損壊』だとされています」



●重要文化財の場合、より重い「文化財保護法違反」で処罰される


では、液体をかけられたのが、今回のように「国宝」や「重要文化財」だったら、どうなるのだろうか。



「重要文化財を損壊した場合、文化財保護法違反で処罰されます(同法195条)。罰則は、5年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金です。国宝も、重要文化財に含まれるとされます」



つまり、単なる「モノ」を損壊するよりも、処罰が重いということだ。



「文化財という、より保護されるべきものを損壊したことから、より重く処罰するというわけです。



ちなみに、文化財保護法違反が成立するときは、先の『器物損壊罪』と二重に処罰されることはありません。



また、仮に犯人が、それぞれの寺院などとは関係ない人物の犯行だとすれば、『建造物侵入罪』(刑法130条)も成立する可能性があります」



大川弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
大川 一夫(おおかわ・かずお)弁護士
大阪弁護士会所属、元同会副会長。
労働問題特別委員会委員、刑事弁護委員会委員など。日本労働法学会会員、龍谷大客
員教授。連合大阪法曹団代表幹事、大阪労働者弁護団幹事など。
事務所名:大川法律事務所
事務所URL:http://www.okawa-law.com