2015年04月20日 11:41 弁護士ドットコム
交際していた男性3人を殺害したなどとして、一審、二審で死刑判決を受けた木嶋佳苗被告人(最高裁に上告中)が3月上旬に「獄中結婚」していたことが週刊誌「女性自身」で報じられ、話題になった。
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女性自身によると、相手は、東京都内に勤める60代のサラリーマンの男性で、支援者の一人だという。妻に先立たれ、木嶋被告人とそれほど年齢の違わない息子と娘がいる。交際のきっかけは手紙で、2013年から10回ほど手紙をやり取りして結婚に至った。木嶋被告人は「なるべく週1で会いたい」と拘置所での面会を求めているそうだ。
「獄中結婚」という言葉はときどき聞くが、被告人として刑事施設に収容されていても、法的には問題なく結婚できるのだろうか。元検事の荒木樹弁護士に聞いた。
「日本国憲法は、『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立する』(憲法24条1項)と定めています。これを受けて、民法では、戸籍法に定める届出によって、婚姻の効力が生ずるとされています(民法739条)。
ですから、刑事裁判のために身柄を拘束されている者や、受刑者、死刑確定者など、刑事施設に収容されている者であっても、結婚することは可能です」
荒木弁護士はこのように述べる。木嶋佳苗被告人が結婚することも、法的には問題ないということだろうか。
「木島佳苗被告人は現在、上告中です。法律上は、刑が確定していない状態で刑事施設に収容されている『未決拘禁者』という扱いです。
有罪が確定したわけではないので、そもそも誰とでも面会ができるし、手紙のやりとりも原則として自由です。婚姻届を提出することに、法律上の問題点はありません」
もし刑が確定して、受刑者や死刑確定者となった場合は、扱いが違ってくるのだろうか。
「死刑確定者にとっては、死刑執行そのものが刑罰であって、死刑執行までの身柄拘束は刑罰ではありません。そのため、法律上、受刑者とは異なる取り扱いを受けています。
死刑確定者は、一般受刑者以上に、面会は厳しく制限されています。それでも、『婚姻関係の調整』のため必要な者と面会することは、面会が許可される場合として、列挙されています(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律120条1項2号)。
つまり、死刑囚と婚約者との面会が許可されることはあります。
また、信書(手紙)を送ったり、受け取ったりすることについても、婚姻関係の調整に関係する場合は許可される場合があります(同法139条1項2号)。婚姻届の授受も許可されると考えてよいと思います。
受刑者も、『婚姻関係の調整』のための面会や、信書のやりとりは許可されることはありますから、婚姻届の授受は許可されると考えてよいでしょう」
刑が確定したとしても、結婚することは法的に問題なくできるわけだ。だが、一緒に暮らせるわけではないのに、結婚をする意義はどこにあるのだろうか。
「結婚して、面会が認められやすい配偶者を得れば、面会や信書の授受の範囲が広がります。受刑者であれば、更生や社会復帰の支援、死刑確定者の場合には、心情の安定に資することに意義があると思います」
荒木弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
荒木 樹(あらき・たつる)弁護士
釧路弁護士会所属。1999年検事任官、東京地検、札幌地検等の勤務を経て、2010年退官。出身地である北海道帯広市で荒木法律事務所を開設し、民事・刑事を問わず、地元の事件を中心に取扱っている。
事務所名:荒木法律事務所
事務所URL:http://obihiro-law.jimdo.com