トップへ

スーパーフォーミュラ開幕戦予選ハイライト:「間合い」を見切った山本の技

2015年04月19日 08:10  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

2015年スーパーフォーミュラ開幕戦でPPを獲得した山本尚貴。ホンダ陣営復活の狼煙を上げた。
まるで優勝したかのように、山本尚貴はインラップで何度もガッツポーズを見せた。

「僕のプランどおりに行けた。ホンダのためにも自分のためにも、このホンダのホームコースでPPを獲りたかった。まだ予選だし、喜びすぎちゃいけないと経験しているんですけど、無線で『この瞬間だけは喜ばせて』とお願いしました(笑)」。

 小林可夢偉の参戦、中嶋一貴、アンドレ・ロッテラーのワールドトップの戦いなど、例年以上に注目を浴びている今季のスーパーフォーミュラ。その初戦で見事予選PPを奪ったのは、ホンダエンジンを搭載するTEAM無限の山本だった。PPを奪った山本の戦い方は、今のスーパーフォーミュラのシビアさを物語っている。

「間合い」
「詰め方」
「運」

予選後の合同会見で、山本尚貴が口にしたキーワードは、おもに以上の3つだった。

 今季のスーパーフォーミュラは、昨年まで不振に喘いだホンダ陣営が復活したことで、さらに接戦となった。予選前の練習走行では、トップを獲得した山本から12番手のJ.ロシターまで1秒以内という僅差。この状況では、わずかなミスやトラフィック、タイヤの温め方、風向きなど些細な変化で順位が大きく変わってしまう。

 それをよく知る山本は、予選でひたすらタイミングを計っていた。

「これだけ接戦になってきていますし、間合いの取り方が大事かなと。タイヤの温め方ひとつ取っても全然変わってきますし、本当にベストな状況でアタック1周できる環境を作ることだけを考えていました」

 実際、Q1からQ3の最後まで、セッションがスタートしてから山本は最後の方にコースインしてアタックに向かう。

「前に誰かがいると自分のペースでタイヤを温められない。それに最後に出て行けば、路面にラバーが載った一番良い状態でアタックできるので、それは狙っていますけど、リスクとして、後ろからアタックすると前が赤旗を出したときにはタイムが残らないことがある」

 それでもいつものポリシーどおりにコースインし、そして、前のクルマのスリップストリームを第3セクターで使えるアタックタイミングを狙っていた。

「エンジニアと話して、単独で走っているときよりもスリップを使っている方がセクター3のタイムが伸びたので、前にクルマがいてくれた方がいいんだなあと。くっつき過ぎているとダウンフォースがなくなるし、離れすぎているとスリップが効かない。そのちょうどいいところを狙っていました」

「そして予選Q3の最後のアタックの時に、セクター3で野尻(智紀)の後ろに着くことができた。クルマのセットよりも、どういう状況でタイムを出した方がいいのか、そういうやり取りをエンジニアとずっとしていました。単純に前がいなければいいという間合いではなくて、後ろに着きながら、セクター3でスリップを使える間合いを取るのと、セクター1、2は着きすぎてダウンフォースが抜けないようにある程度、距離を置きながら、でもちょっとずつ間隔を詰めて、そしてセクター3でスリップに入るというのがベストだった。そこは本当に狙っていました」

 レースは相手によって被害を受けることもあるが、相手を活かすこともできる。山本はワンメイクのシビアな戦いだからこそ、相手を自分にどう活かすかにフォーカスしていた。それが前のクルマとの間合いであり、アタック中の前のクルマとのギャップの詰め方である。そして、今回は極めつけに信頼できるドライバーが前にいたという、好運が山本に味方した。

「Q3ではトムス、ダンデライアンの後ろに着こうと思っていて、そこはエンジニアがいいタイミングで出してくれた。そして、野尻を見つけて、野尻は変な動きはしないという信頼もあるので、いい相手を見つけて後ろに着きました。それも運ですね。いくらこういうことがやりたくても、うまく行くとは限りません」

 ただもちろん、その運を導くために山本は何度もシミュレーションして準備を整え、そして創造力を駆使したことは言うまでもない。