2015年04月18日 12:41 弁護士ドットコム
「バイトで学費貯めて来年大学行こうと思ってたのにその計画も全部パーだ」。ネット掲示板「2ちゃんねる」に書き込まれた、バイト収入の「103万円の壁」なるものに憤る投稿が話題になった。
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投稿者は大学進学の費用を稼ぐため、バイトをしてお金をたくさん稼ぎたいそうだ。しかし、収入が年間103万円を超えると、親の「扶養家族」から外れてしまうため、これ以上働くべきかどうか悩んでいるという。
「扶養から外れればいいじゃん」という意見があったが、これに対しては、「扶養外れることでいくら控除がなくなるか知ってるか」「かなりの痛手だろ」と慎重だ。他の投稿者からは、「ちょっと超えたくらいではばれない」「2か所で働いて、1か所で(103万円)超えなければいい」という指摘もあった。
この「103万円の壁」について、投稿者は激しく憤っているわけだが、そもそも扶養控除とはどんなものなのだろうか。近藤学税理士に聞いた。
「所得税の扶養控除とは、年末時点で16歳以上の扶養親族がいる場合に、一定額を所得から控除できるという制度です。
親と子どもの関係で簡単に説明すると、子どもが扶養親族であれば、親の税金が安くなります」
扶養控除は、扶養される人(子ども)ではなく、扶養する人(親)の税金が安くなる制度というわけだ。扶養親族になるには、どういう条件を満たす必要があるのだろう。
「条件は大きくいって、二つあります。
まず、納税者と生計を一にすること、つまり『同じ財布』で生活していることです。もう一つは、扶養親族の合計所得金額が38万円以下であることです」
投稿者は「年間103万円を超えると扶養親族を外れてしまう」と言っているが・・・
「それはこういうことです。アルバイト収入は給与所得にあたるので、最低65万円の『給与所得控除』を受けることができます。
つまり、子どもの給与収入が103万円の場合は、給与所得控除額65万円を引くと、他に所得がなければ合計所得金額は38万円になるので、ぎりぎり扶養親族となることができます。
そうしたことから、一般的には『バイトは103万円まで』と言われているわけです」
子どもが扶養親族になると、親の税金はどのくらい安くなるのだろうか。
「税金を計算する元となる収入金額から、38万円分を差し引くことになります。
たとえば、親の給与収入が600万円だとしたら、税率は20.42%の枠に入ると考えられます。
38万円×20.42%=7万7500円、
つまり、親の所得税が年間で7万7500円安く済むということです。逆に、子どもが扶養からから外れると、この金額が親の税金に上乗せされます」
控除される額は、どの年齢でも同じなのか。
「年末時点で扶養親族が19歳以上23歳未満の場合は、親の負担が大きくなるので控除額は38万円ではなく、63万円になります。
別名『すねかじり控除』とも呼ばれています。このように扶養控除は、子育てあるいは介護による経済的負担を緩和することを目的としています。
以前は、16歳未満でも扶養控除は受けられましたが、民主党政権時代に『子ども手当』と引き換えに廃止されました」
「103万円の壁」について、他の投稿者からは、「103万円を超えてもごまかせる」といった指摘もあったが、実際はどうなのだろうか。
「給与の支払者は、毎年1月に給与受給者の住む市町村に給与支給額を報告します。2か所で働いていても市町村でそのデータは合算されますし、税務署も把握します。
つまり、アルバイト収入を合算して103万円を超えれば、親が働く会社に税務署から通知が送られ、後から追加で税金を徴収されることになります」
ごまかそうとしても、ばれてしまう可能性が高いというわけだ。
「そうですね。ただ、投稿者は103万円の制度を『糞制度』と憤っているそうですが、逆に学生の場合には、勤労学生控除という『神制度』もあります。
この27万円の控除により、親の扶養親族からは外れても本人は給与収入130万円まで非課税となります。
話をまとめると、確かに、年間の収入が103万円を超えると、扶養控除を受けられなくなるので、親が納める税金は高くなります。
しかし、本人(子ども)は、学生であれば130万円までは、非課税なので、税金を払う必要がありません。そこで、トータルでどれだけ税金の支払いが増えるのかを確認して、どれだけ働くのがいいのか、判断するといいでしょう」
近藤税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
近藤学(こんどう・まなぶ)税理士
京都府郊外で税理士事務所を開業。最近では、ExcelのVBAを研究し、会計ソフトから変換できる資金繰表作成ソフトこがねむしを開発し販売している。
3冊の著書と、1冊の翻訳書を出版している。
事務所名 : 近藤学税理士事務所
URL http://shikingurihyou.com
(弁護士ドットコムニュース)