2015年04月17日 19:01 弁護士ドットコム
テレビ朝日の「報道ステーション」のコメンテイターを降板した元経産省官僚の古賀茂明氏が、最後の出演時に「官邸から圧力があった」と発言したことが、メディアや政界を巻き込んだ大きな問題へと発展している。
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自民党は4月17日、テレビ朝日の幹部を呼び出して事情の説明を求めた。報道によると、同党は、古賀氏が番組内で菅義偉官房長官を名指ししたことを問題視して、放送倫理・番組向上機構(BPO)への申し立ても検討しているという。
一方の古賀氏は前日の16日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いて、外国メディアの記者に向けて、「政権から圧力がかかることで、マスメディアの萎縮が起きる」という懸念を示していた。
この記者会見には、日本の新聞やテレビの記者も取材にきていた。会見中は特に質問することもなかったマスメディアの記者たち。だが、会見終了後、席を立って会場をあとにしようとする古賀氏を取り囲み、カメラとマイクを向けて取材をおこなった。
このなかで、フジテレビの女性レポーターが、多様な視聴者がいるテレビ番組で、降板の理由として「官邸の圧力」と訴える必要があったのかと問いかけた。これに対して、古賀氏は「私を応援してくれる人に本当のことを伝えるために言った」「あなたに批判される謂われはない」と反論した。
この日の記者会見と囲み取材の様子は、インターネット動画サイト「ニコニコ生放送」でも生中継されていた。古賀氏と女性レポーターはどのような問答をおこなったのか。以下、そのやりとりを書き起こして紹介する。
フジテレビの女性レポーター(以下、フジテレビ):先ほど、明日(4月17日)の自民党からの聴取について、「集団リンチのような状況になることもある」と非常に強い言葉を使って、説明されていましたが、その真意をもう一度お聞かせください。
古賀:自民党がそもそも、あんなことをすること自体が異常だと思いますよね。世界中に恥をさらすことになると思います。今日これだけ、海外メディアの方が関心をもっている中で。
僕は正式な発表を見ていないので、もしかしたら、やらないんじゃないかなとさっきまでは思っていました。みなさんはやると思っておられるかもしれませんが・・・。僕は確認していないので、あれなんですけども。
要するに、こういう状況の中で、(テレビ局幹部)を呼んで・・・何を聞くんですかね? 想像されましたか?
フジテレビ:一つひとつの内容について確認をしたいと・・・。
古賀:どうして、自民党が確認する必要があるんですか? 言ってみてくださいよ。
フジテレビ:先ほど会見の中でもおっしゃられていたように、圧力をかける側は圧力だと思っていない前提で、きっと呼んでいるんだと思います。
古賀:いやいや。圧力をかける側は、相手がどう思っているのかを考えながら行動すべきだ、と私は言っているんですよね。あなたたちは一生懸命、政権側に立って、質問されているでしょう。それが僕には、全然理解できない。あなたは(政権と)戦う気はないんですか。
フジテレビ:それは時と場合によると思いますけど。
古賀:時と場合?
フジテレビ:はい。
古賀:じゃあ、戦わないって決めたら、そうやって戦う人を追い詰めるために質問するんですか? これ全部、(他のカメラも)撮ってますよ。あなたもね。
フジテレビ:一つ申し上げると、古賀さんが自分の主張を、テレビ朝日の「報道ステーション」で披露というか・・・番組内で話された。見ている視聴者はいろんな方がいらっしゃるわけで、古賀さんの立場や主張にまったく興味のない方もいると思うんですね。
そういう方たちに対して、誰が見ているかわからないところを使って・・・というのはどう思われますか?
古賀:あなた、自分が言っていることがおかしいとわかりませんか?自分で自分を笑いそうになりませんか?
フジテレビ:いえ、それはそう思います。
古賀:いろんな意見を持っている視聴者がいるから、関心がある人もいれば、いない人もいるんですよ。だけど、私は呼ばれて、「自分の意見を言ってください」ということですから、言っただけです。
1月の時点で、最後だと決まっていました。私をすごく応援してくれていた人もたくさんいた。最後であれば、そういう人たちに本当のことを伝えたいという気持ちで言ったので、それを、あなたに批判されるような謂われはまったくないと思います。
そんなことを公共の電波を使って、もし放送するとすれば、そっちのほうがはるかに問題ではないですか。こういうのは、ネットでどんどん流れると思いますが、こういうレポーターがいるということは、日本中の方によく見てほしいし、聞いてほしい。
あなた方は顔をさらす立場の人だから、裏でこそこそやっている人より、はるかに責任と緊張感を持って、やっておられると思います。
顔をさらしてやっておられるということは、テレビ局の看板を背負っているということではなくて、マスコミの一員として、ジャーナリストの一員として恥ずかしくないのか、ということを考えながら、会社のためにやるんじゃなくて、「本当に世の中のためにやろう」と、そういうことでぜひ放送してもらいたいと思います。
(弁護士ドットコムニュース)