会社の接待や会合、懇親会などのイベントが増える季節、春。本格的な日本料理店などを訪れる機会がある人もいるのでは? それなのに、食事のマナーに自信がもてず、「オドオドしてしまって料理の味が楽しめない」なんて悲しい声も…。
「一度覚えてクセにしてしまえば、マナーは堅苦しく考える必要はありません。簡単なことからひとつひとつクリアしていきましょう」そうアドバイスをくれたのは、マナーデザイナーの岩下宣子さん。
日本料理をいただくときの基本のマナーは、箸と器を正しく使うこと。次をチェックしてみて。
◎持っていい器と持っていけない器を把握して
揚げもの、焼き魚、刺身、汁のない料理が盛られた平皿は手で持ってはいけない器。つけ汁の皿、小鉢、醤油皿などの小さな器は持ってもOK。茶碗、汁椀は必ず手で持って食べるようにして。丼やお重は小さめのサイズなら持っても可。手の平に乗るサイズなら持っていいと覚えて。
◎箸に関するマナー
箸は必ず箸置きに置くのが基本。箸置きがない店では、箸袋を千代結びにして代用しよう。縁のあるお膳がでてきたら、縁に箸をかけてもグッド。食事が済んだら、箸先を箸袋に入れて、汚れたところを隠しておくのを忘れずに。
◎正しい箸の上げ下ろし方
箸の上げ下ろしには両手を使うのが正しい作法。以下の手順で行って。
(1)右手で箸の中央を持ち、自分の胸の位置まで持ち上げる。
(2)左手を箸の下に添えて支えて持ち、右手は箸に沿って右にすべらせる。
(3)右手を返して箸を使える状態に持ち、左手を離す。箸を置くときは逆の手順で。
「器の上に箸を渡して置く“渡し箸”、箸先をなめたりくわえたりする“ねぶり箸”、箸で器の料理をさがす“さぐり箸”、箸で小鉢などを引き寄せる“寄せ箸”はマナー違反なので気を付けましょう」(同)
次は、少し難易度が高い焼き魚の食べ方。下の手順を参考にしてマスターしよう。
◎焼き魚の食べ方
魚の身はひっくり返さないのが正しい食べ方。ただし、鯛は骨離れが悪いので、ひっくりかえしてもOK。
(1)焼き魚は表側の身の肩部分またはお腹から食べ、尾の部分まで食べ進める。
(2)表側を食べたら、魚の頭部分を左手で押さえて中骨と下の身の間に箸先を入れて骨を外す。
(3)外した骨は、身の奥側に置く。
知っておけば、難しくない和食のマナー。基本をマスターして肩ひじはらずに日本料理店ののれんをくぐろう。
岩下宣子
全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流小笠原清信氏のもとでマナーを学び、1985年、現代礼法研究所を設立。マナーデザイナーとして、企業、学校、商工会議所、公共団体などでマナーの指導、研修、講演と執筆活動を行う。著書は『マナーのすべてがわかる便利手帳』(ナツメ社)、『美しいマナー あなたの魅力を演出する』(PHP研究所)、『贈るマナー贈られるマナー これでOK』(小学館)ほか多数。