中国GPで今季2度目のダブル入賞を果たしたザウバー。チームマネージャーのベアト・ツェンダーは、好調の要因を「一番は、フェラーリのパワーユニットが大きく改良されたこと」だと語る。
「今年のフェラーリのパワーユニットが優れているのはパワーだけでなく、ドライバビリティ。むしろドライバビリティが格段に良くなったことがラップタイムに大きく貢献している」と続けた。
ドライバビリティの改善は、もうひとつの効果を生んだとツェンダーは解説する。
「昨年のいまごろはパワーユニットをどう使いこなすかに振り回され、さらにパワーユニットがあまりにも重かったために車体側では軽量化ばかり行っていた。だから、マシンのパフォーマンスを上げるような新しいパーツの開発がなかなか進まなかった。しかし、今年は3戦目にして、もう新しいフロントウイングを投入している。フロントのダウンフォースが欲しい中国GPに持ってこられたことは、レースで大きな武器となった」
ただし中国GPに用意された新しいフロントウイングはひとつだけ。フェリペ・ナッセが使用することになったのだが、予選アタック中に縁石にはみ出した際、フラップ裏側についていたフィンが飛び散ってしまった。しかし旧型に変更すればピットレーンスタートとなってしまうため、FIAに許可を得て、新型を修復して臨んだ。
「新しいフロントウイングと旧式のものとでは単にフロントの空力が変わるだけでなく、車体全体のエアロダイナミクスが変わってしまい、セッティングも異なる。フロントウイングだけを交換するわけにはいなかった。フロントウイングを変えれば、ピットレーンスタートになるからセットアップも変更できるが、週末フェリペを違うセッティングで走らせたことがなかったから、それは無謀な判断だった。幸い、壊れたフラップは修復可能だったから、直してレースさせたんだ」
ツェンダーが最も恐れていたのが、ロータスのパストール・マルドナドだった。
「予選9位と10位からスタートする我々にとって、最大の脅威が11番手からスタートするマルドナドだった。彼のアグレッシブなドライビングだけが理由ではない。予選11位ということは、彼はソフトでもミディアムでも、いずれにしてもニュータイヤを履いてスタートしてくるからだよ! とにかく3コーナーまでを無事に通過してくれれば、2台入賞する可能性は大いに広がると考えていた」
その心配は杞憂に終わった。2台のザウバーは1周目を8番手と9番手で通過。マークしていたマルドナドにかわされる場面もあったが、トラブルやアクシデントに遭遇することなく、自分たちのレースに徹した。最後はマックス・フェルスタッペン(トロロッソ)がストップするという運も味方につけてエリクソンが10位に入り、8位のナッサとともに2台そろってポイントを獲得した。
これで5ポイントを加点したザウバー。気がつけばレッドブルを抑えて、コンストラクターズ選手権で4位に浮上している。2015年の第2グループは気の抜けない戦いになりそうだ。
(尾張正博)