労働基準法に違反する事業者を取り締まる「労働基準監督署」。ブラック企業に立ち入り調査し、違法行為があれば「是正勧告書」を交付する。警察と同じ「逮捕権限」を持つ、厚生労働省の出先機関だ。
しかし、劣悪な労働環境を告発しようにも、なかなか簡単ではない。理由のひとつは、相談窓口の受付時間が勤務時間と重なっているからだ。2015年4月13日に投稿された以下のツイートも、2500件以上リツイートされ話題になっている。
「いつも思うんだけど、厚労省はサビ残やブラック企業を本気で改善したいんなら、まず労働基準監督署の受付窓口が『午前8時30分から午後5時15分まで、土日祝日休み』というのを、なんとかせいよ」
「三交代制にしろ」VS「受付時間外も職員は働いている」
東京労働局のホームページをみると、窓口取扱時間は「8時30分~17時15分まで」となっている。土・日・祝日と年末年始(12月29日~1月3日)は休みとなっていて、一般の会社員が退社後や休日に相談を持ち込むことは難しい。
こうした声は、キャリコネニュース編集部にも寄せられることがある。このツイートには、労働者が相談しやすいように「(受付時間を民間と)12時間ずらせばいいのにね?」「行政機関全部三交代制にしろよ」といった賛同の声があがっている。
その一方で、「自らが模範となり残業しない!というコンセプトかと」という声もある。現状でもそう甘くないと指摘する人もいる。
「ただでさえ公務員減らしで監督官減ってるのに、受付を全日に拡大したら監督官一人当たりの仕事量がオーバーフローして労基署が超ブラック化→やる気のない職員しか残らない→社会全体が不幸に、となる。受付時間外も職員は働いているのです」
確かに窓口で告発を受け付けるだけでなく、立ち入り調査に向けて情報を収集したり、事前調査を行ったりする必要もある。とはいえ、相談に行けない人はどうすればよいのだろうか。他の窓口の設置や、受付時間を長くする計画はないのだろうか。
夜22時まで「ほっとライン」を開設中だった
厚生労働省の労働基準局監督課の担当者に取材してみると、平日昼間以外の受付方法もすでに準備されているようだ。
「時間外に相談したいという声が多かったため、2014年の9月から『労働条件相談ほっとライン』を開設しています。水曜日以外の平日は夜22時まで、土日も相談を受け付けています」
利用実績もあり、開設から2か月間で3422件の相談が寄せられているという。当初は2015年3月31日までの開設予定だったが、4月1日以降も継続して受け付けている。相談が多いため、昨年度よりも「回線を増やして対応している」とのことだ。
厚労省では「窓口の取扱時間を長くしては」といった議論もあったようだ。しかし、過重労働に従事している人は、そもそも「窓口に足を向けること自体が難しい」という面がある。
そこで夜間など仕事から解放された時間帯に、「電話をすることならできるかもしれない」と考えて、電話での相談窓口の設置が決まったという。
24時間受付の「メール窓口」もある
約3000件の相談で最も多かった内容は「賃金不払い残業」(588件)。次いで「長時間労働・過重労働」(444件)だったという。相談内容から法令違反が認められるケースでは、
「労働基準監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなどの必要な対応を行います」
と、窓口での相談と同様の対応が受けられるとのことだ。
電話の相談が難しい場合でも、監督課では「労働基準関係情報メール窓口」を用意している。受付内容は、違法な時間外労働・過重労働による健康障害・賃金不払残業などの「労働基準関係法令に関する問題」に限られ、匿名での相談も可能だ。
労働条件相談ほっとラインの番号は0120-811-610。平日(月・火・木・金)は17時~22時まで、土日は10時~17時まで相談を受け付けている。【リーフレット(PDFが開きます)】
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