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米国市場ねらう「エアウィーヴ」のPR戦略 一流選手の養成施設に無償提供、モニター調査も

2015年04月14日 06:40  キャリコネニュース

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2015年4月7日放送の「ガイアの夜明け」は、世界的なブランド力を高めるためにさまざまなPR戦略を展開する日本企業を紹介していた。そのひとつであるエアウィーヴ社は、ベッドの上に敷く高反発マットレスを製造販売している。

価格は標準品でも6万円台と高めだが、新宿・伊勢丹本館では月200枚も売れているという。CMに起用されている浅田真央さんは、商品が有名になる前からの愛用者で、遠征にも持参していた。開発者で会長の高岡本州(54)さんがそれを聞き、2011年から広告に起用し始めた。高岡さんは「リアルなユーザーであることが大事」と言う。

叔父の会社を引き継ぎ、釣り糸を作る技術を応用

高岡さんは、米スタンフォード大学院で経営を学んだ経験を買われ、叔父の機械製造会社を引き継いだ。漁網や釣り具を製造する機械を作っていたが、将来性を懸念し、釣り糸を作る技術を応用して化学繊維をからませた素材でマットレスパットを開発した。

この3年で売り上げは10倍の115億円にのぼり、日本国内では急成長を続けているが、危機感もある。人件費の安い国で作られてマネされたり、売り場を取られたりしてしまうおそれがあるからだ。高岡さんは、先手を打つことにした。

「こういう時期に海外に行って、マネされる前に市場を取りに行く」

しかし去年から始めた米国向けネット販売は、実は全く売れていない。米国人は柔らかい敷布を好み、認知もされていないため、最初のハードルが高いのだ。

高岡さんは米市場進出の布石として、フロリダにある一流のスポーツ選手を養成する教育施設「IMGアカデミー」に、5年前からエアウィーヴ100枚を無償提供しており、2年前には更に500枚を追加で提供していた。

IMGアカデミーは、テニスのマリア・シャラポアや錦織圭が留学し、訓練を受けた施設。およそ1000人の生徒の8割は寮生活。未来のアスリートたちに、自社の製品を早いうちから体験してもらっているのだ。

生徒も「ぐっすり休めたように感じる」

高岡さんは、「子どもたちがエアウィーヴでいい睡眠をとれることが分かれば、明確なイメージがつくと思う」と狙いを語る。重要なのは、効果をデータ化することだ。生徒60人に、エアウィーヴで寝た後と、なしで寝た後の運動記録を、それぞれ3か月ずつ調査しデータをとった。

平均値は、わずかだがエアウィーヴで寝た後のほうが高いと出た。生徒のひとりも「ぐっすり休めて、毎日パフォーマンスが上がっている感じがします」と語る。

高岡さんは「IMGは米スポーツ界に広く認知されており、一緒に研究したことは我々のブランド戦略に大きな影響が出ます」と確信を持った様子で話した。

さらに米五輪チームのスポンサーにもなっているほか、ニューヨークの高級ホテル・アンダーズ フィフスアベニューへ寝具として使ってほしいと売り込み、ソーホー地区にアメリカ1号店もオープンさせた。

いずれもIMGアカデミーでの実績をアピールすると好感触で、来店した客のひとりは「トレーニングしている学生が使っているので説得力がありますね」と購入を検討していた。これまでは月に4~5枚程度だった売り上げが、店のオープンひと月で22枚を販売した。

「何度もしつこく、一歩一歩情報を発信していく」

高岡さんは「新しいブランドなので、何度もしつこく、一歩一歩情報を発信していく。そういういくつかのことをきちんと伝えていくと、お客さんが買ってくれて、また広がっていく。その繰り返し、まだまだこれからです」と語った。

いい製品さえ作っていれば、売れるというものではない。どんなに良い品質でも、宣伝の仕方ひとつで売り上げは大きく変わってくるのは事実だ。惜しみなく手間とお金をかけて攻勢をゆるめない高岡さんのやり方に力強さを感じた。

ただ、この宣伝で「高機能マットレス」の市場が形成されると、かえって競合メーカーの類似品が出回りやすくなるリスクもあるのではないか。それだけに今後もスピードや信頼関係、ブランド力が重要になりそうだ。(ライター:okei)

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