2015年04月13日 11:21 弁護士ドットコム
「離婚したい」「もともと好きではなかった」「未亡人になりたいから死んでほしい」——こんな言葉を妻から毎週のように浴びせられている夫がいるようだ。「精神的に限界だ」という男性から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿があった。
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妻は結婚して以来、自分の思い通りにいかないことが起きると、ストレス解消目的で男性に暴言を吐くのだという。男性は「いつ機嫌が悪くなるかと毎日びくびくしている」「感情を捨てて、奴隷になったつもりでできる限り彼女の思い通りに動いているがもう限界」と記している。
男性は離婚したいと考えているが、妻は体裁を気にして「離婚する気はない」と言っているという。ちなみに、夫婦ともに浮気はしておらず、妻は主婦として家事をきちんとこなしているそうだ。
相談者の男性は「相手のDVや不倫がない限り、離婚成立の可能性はかなり低いと聞いた。単なる痴話げんかとみなされてしまうのか?」と、不安な様子だ。こうしたケースで、離婚できる可能性はあるのだろうか。
離婚問題にくわしい山口政貴弁護士は「本件の妻の言動は、最近注目されている『モラハラ』のケースだと思われます」と語る。
モラハラ、すなわちモラル・ハラスメントとは、身体的な暴力を伴わず、言葉や態度で相手を精神的に傷つける行為をさす。夫婦間のトラブルの元になることも少なくない。
しかし、山口弁護士によれば、「モラハラで離婚できるかどうかについては、法律上直接の規定はありません」という。
「裁判によって離婚が認められるケースとして、民法で次の5つが規定されています。
・不貞行為
・悪意の遺棄
・3年以上の生死不明
・強度の精神病
・その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
本件では、妻のモラハラが、最後の『重大な事由』にあたるかどうかが問題となります」
一般的に、どのような事情が「重大な事由」にあたるのだろうか。
「一方が離婚を拒否しているにもかかわらず、裁判所が強制的に離婚させるわけですから、『重大な事由』と認められるケースはかなり限定されます。
具体的には、暴力やギャンブル狂い、過度の宗教活動、重大犯罪によって服役したなど、夫婦関係の修復の見込みがほとんどないと思われるような場合です。単なる性格の不一致や姑との不和などでは、『重大な事由』と認められる可能性は低いと考えられています」
では、今回のケースについてはどうなのか。
「モラハラについて認知されるようになってからまだ日が浅く、裁判例が蓄積されていないので、具体的な判断は難しいです。
ただ、夫婦の一方によるモラハラが、正当な理由なく、相当長期間にわたって執拗に行われ、その内容も、人格を完全に否定するような常軌を逸したものである場合には、重大な事由があるとして、離婚が認められる可能性があるでしょう」
相手の「死」を願うような結婚生活は、誰にとっても不幸なのは確かだろう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山口 政貴(やまぐち・のりたか)弁護士
サラリーマンを経た後、2003年司法試験合格。都内事務所の勤務弁護士を経験し、2013年に神楽坂中央法律事務所を設立。離婚、婚約破棄等を専門に扱っており、男女トラブルのスペシャリストとしても知られる。
事務所名:神楽坂中央法律事務所
事務所URL:http://www.kclaw.jp/