ルイジアナ州ニューオーリンズのNOLAモータースポーツパークで初開催されたベライゾン・インディカー・シリーズ第2戦。6度のイエローコーションが入る荒れた展開をシュミット・ピーターソンのジェームズ・ヒンチクリフが勝利した。佐藤琢磨(AJフォイト)は、終盤のアクシデントでリタイアを喫している。
ウエットコンディションでスタートしたレースは、考えられていたより速いペースで乾いていった。10周を過ぎた時点でピットへと滑り込み、ソフトコンパウンドのレッドタイヤへとスイッチするチームが続出した。
レースは75周が予定されていたが、インディカーはスタートを目前にして「規定周回数に到達しなくとも1時間45分が経過した時点で新しい周回には入らない」とのルールを採用した。そして、これがレース結果に大きな影響を及ぼした。
16番手スタートだったジェームズ・ヒンチクリフは、レッドへのスイッチが始まる前には14番手にまでしかポジションを上げていなかった。13周目にピットインした彼は、コースへ復帰するとまたふたつのポジションアップを果たして見せたが、まだ順位は12番手。
ここから3回リスタートが切られ、そのどれもが1周も終えないうちにフルコース・コーションとなった。ライバルたちはペースカーランを利用し、続々と2回目のピットストップを行った。ポールスタートからレースを完全に支配していたファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)も33周目にピットに向った。
しかし、ヒンチクリフだけはコース上に残り続けた。13周目にレッドタイヤ装着と給油を行っただけの彼らは、ゴールまで給油無しで走り切る大ギャンブルに出たのだ。そして、それは大当たりした。「雨が降ると考えてのステイアウトだったけど、イエロー多発が僕らに味方することとなった」と思わぬカタチで移籍後初勝利を飾ったヒンチは笑顔で語った。
2位はエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)のものとなった。20周目のリスタートで他車と接触、フロントウィングを傷めた彼はピットインして順位を大きく下げた。しかし、29周目にピットインしたことで形勢を逆転させ、ペンスキー勢でトップとなる2位フィニッシュを達成した。
3位でゴールしたジェームス・ジェイクス(シュミット・ピーターソン)も同様だ。19周目のスピンで大きく後退したが、上位陣と異なるピットタイミングで不利を跳ねのけた。終盤の彼はレッドタイヤ装着で素晴らしいスピードを見せており、あと少しでカストロネベスをパスできそうだったが、1年間休んでインディカーに復帰して僅か2戦目にしての表彰台フィニッシュなら文句はないだろう。
インディカー復帰組のシモーナ・デ・シルベストロ(アンドレッティ・オートスポート)があと一歩で表彰台の4位。4台目のエントリーながらチーム内のベストというのも彼女にとっては嬉しいだろう。この活躍でロングビーチ、バーバーへの参戦が決まるかもしれない。
モントーヤは結果的に最後となったリスタートでウィル・パワー(チーム・ペンスキー)に抜かれたが、それを抜き返して5位でフィニッシュした。「昨日は幸運に恵まれてポール・スタートの権利を手に入れたけれど、今日の運は僕らに味方しなかった。2レース続けてトップ5フィニッシュなら文句は無いよ。それより、2戦連続でチーム・ペンスキーのマシンは間違いなく最速だったんだから、次のロングビーチがとても楽しみだ」とポイントリーダーは語った。
佐藤琢磨は得意のウエットレースだけに活躍が期待されていた。本人もそのつもりだっただろう。しかし、ウエットセッティングでのマシンセッティングが悪く、ピットタイミングや作戦を味方につけることもできなかった。
ソフトコンパウンドのレッドタイヤ装着では速いペースを実現できていたが、一度埋もれた後方のポジションから抜け出すことができないままレース終盤を迎え、荒っぽいレースを戦っていたチャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ・レーシング)にヒットされ、その衝撃でマシン内部の配線がカットされてたためにギヤシフトができなくなり、ピットでレースを終えた。
「慎重に走っていたんだけれど、最後にぶつかられてしまった。キンボールは誰かと絡んだらしく、こっちにぶつかって来たんです。次のロングビーチはストリート。セント・ピーターズバーグでの僕らは速かったので、ロングビーチでもマシンは良いはず。次はいいレースを戦えると思います」と琢磨は話していた。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)