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実在しない「叔母」が死んだ――ウソの「忌引き休暇」を取ったら解雇されてしまうの?

2015年04月12日 12:51  弁護士ドットコム

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実在しない叔母が死んだなどとウソをつき、12回にわたってニセの「忌引き休暇」を不正に取得していたとして、仙台市の係長(60)が3月下旬、定年を目前にして懲戒免職になった。


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報道によると、係長は2008年5月から2013年9月にかけて、実在しない叔父・叔母や存命中の親族ら12人の名前を使って、忌引き休暇を申請。今年1月に「叔父が亡くなったから休みたい」と休暇を申請した際、2010年に同じ叔父の死去を名目に休暇を取得していたことから、不正が発覚した。



係長は計16日間の休暇を不正に取得しており、「有給休暇を使い切ったので忌引を申請した」と話したという。仙台市は、不正取得した16日間は欠勤扱いにし、係長に対して50万円の返還を求める。退職金は半額になるという。



●懲戒免職でもやむを得ない?


同様のことを民間企業において行った場合、解雇される可能性があるのだろうか。土井浩之弁護士は「解雇される可能性はあると思います」と話す。



「ある人の行為が周りに与える影響を考えると、その人を職場から追い出さなければ企業秩序が守れないという場合、解雇は法律的に有効になります」



今回のような「ウソの忌引き休暇」も、企業秩序を揺るがすような行為と判断されるのか。



「忌引き休暇は、賃金は出ないことがほとんどです。ただ、賞与や昇進の査定などでは、欠勤扱いしないという便宜が図られていることが多いようです。



賃金が出ないとはいえ、企業体にとって経済的な損失がないとは言い切れません。職務遂行計画にも影響が出るでしょうし、同僚への仕事のしわ寄せなどもおこります」



今回の市職員のケースでも、そうした理由で「懲戒免職はやむを得なかった可能性があると思います」と土井弁護士は指摘する。



しかし民間企業で「(普通)解雇」ではなく、より制裁的な意味合いのある「懲戒解雇」という重い処分になることもあるのだろうか。



「忌引き休暇が、近しい人が亡くなったときに情において取得することが認められた制度だとすれば、これを悪用したのだから、悪質だといえるでしょう。



公務員でも民間企業でも、嘘をついて休暇を取得すれば、他の社員との信頼関係に深刻な影響が出るでしょうし、真似をする人が出てきたならば、企業秩序が崩壊しかねません。何らかの懲戒処分がなされるのは、当然だと思います。



懲戒処分の中で一番重い処分が認められるか否かについては、その人の企業体の中での立場や悪用の回数等に照らして、解雇されるか否か、懲戒解雇となるかが判断されることになると思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
土井 浩之(どい・ひろゆき)弁護士
過労死弁護団に所属し、過労死等労災事件に注力。現在は、さらに自死問題や、離婚に伴う子どもの権利の問題にも、裁判所の内外で取り組む。東北学院大学法科大学院非常勤講師(労働法特論ほか)。
事務所名:土井法律事務所
事務所URL:http://heartland.geocities.jp/doi709/