現時点でマクラーレン・ホンダのライバルは、フォース・インディアであることが見えてきた。フォース・インディアのチーム副代表を務めるボブ・ファーンリーは「第8戦オーストリアGPからバージョンアップしたマシンを投入する」ことを発表。もともとの予定ではモナコGPからの投入を考えていたが、オーストリアGP後にレッドブルリンクで行われるテストで走行できるメリットを考慮して、あえて後ろ倒ししたという。
フォース・インディアは11台しか完走しなかった開幕戦こそ、ニコ・ヒュルケンベルグが7位に入賞したが、2戦目のマレーシアGPでは開発途上のマクラーレン・ホンダにオーバーテイクを許すなど、厳しい戦いを強いられている。セルジオ・ペレスも「自力でポイントを取れる速さがないマシンでレースをするのは本当にフラストレーションがたまる」と早期のバージョンアップを望んでいる。オーストリアGPに投入予定の改良型マシンは、いわゆる「Bスペック」と呼ばれるほど大きく改良されるようだ。
なぜフォース・インディアは改良型マシンを開幕戦から投入しなかったのだろうか。チーフエンジニアのトム・マククロフは、次のように説明する。
「限られた予算で最大限の結果を出すための苦肉の策だ。我々は昨年の途中からドイツのケルンにあるトヨタの風洞を使用することになったが、その段階でもう開幕戦には間に合わないとわかっていた。だから、いまのマシンの開発はレギュレーション変更に対応するだけの最小限なものにとどめ、残りの予算ほとんどをトヨタの風洞に注ぎ込む決断を下したんだ」
マククロフによれば「改良型マシンにはモノコック以外のすべてを見直した大がかりな変更が施されており、モノコックこそ変えていないものの、ほぼ新車だと言っていい」という出来だという。その開発状況はフォース・インディアのドライバーも把握している。だからペレスは「6月のオーストリアGPが待ちきれない」と期待を寄せるのだ。
フォース・インディアの状況は、マクラーレン・ホンダにとっても気になるところだ。彼らが新車を準備するまでの2カ月で、ホンダはどこまでパワーユニットを改善し、マクラーレンがパッケージをまとめあげることができるのか。フォース・インディアのBスペック投入によって、セカンドグループ以降の戦いが新たな展開を迎えることは間違いない。
(尾張正博)