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F1中国GPフリー走行分析:フェラーリの真の速さはまだ不明。不可解な“S”のロングラン

2015年04月11日 05:40  AUTOSPORT web

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前戦マレーシアでメルセデスの牙城を崩したフェラーリ&ベッテル。中国GPの金曜走行ではソフトタイヤのペースが不可解だったが、メルセデスとの2強状態に変わりはない
今週から、シーズン初の連戦となる中国&バーレーンGPの開催です。まずは上海サーキットで開催される第3戦、中国GPです。

 前戦、第2戦のマレーシアでは、フェラーリが驚異的なロングランを見せ、メルセデスAMGを実力で負かしました。金曜日セッションでメルセデスAMGがPUトラブルで走行不足だったとはいえ、決勝レースで“ガチンコ勝負”に負けるのは、現行のテクニカルレギュレーションになってから初めてのこと。それだけ衝撃的な1戦だったと言えます。

 そのメルセデスとフェラーリが1勝ずつ、という状況で迎えた3戦目の中国GP。今回、上海サーキットで速いのはどちらのチームなのか。金曜日の2回のフリー走行を検証し、今回のグランプリの結末を予測してみることにしましょう。

 まず、今回もタイムシートのトップを奪ったのは、やはりメルセデスAMGでした。しかもフリー走行1回目も2回目も、ルイス・ハミルトンがトップタイム。その上、フリー走行1回目では、3番手につけたフェラーリのセバスチャン・ベッテルを1.1秒も引き離す、圧倒的なモノでした(ちなみにチームメイトのニコ・ロズベルグは、0.5秒ハミルトンに劣っていました)。

 しかし、フリー走行2回目には、その差が一気に詰まります。2番手に来たのはベッテルのチームメイト、キミ・ライコネンですが、ハミルトンとの差は0.443秒。開幕戦オーストラリアも、第2戦マレーシアも、ロングランこそフェラーリに分があったものの、一発の速さはメルセデスAMGが圧倒的でした。しかし今回はその差が近づき、フェラーリの一発の速さも、メルセデスAMGに近づいていることを実感させました。

 では、ロングランではどうだったのでしょうか? メルセデスAMGはハミルトンにソフトタイヤ(S)を、ロズベルグにミディアムタイヤ(M)を履かせて、ロングランを行ないました。Sのハミルトンは、1分42.3秒でロングランをスタートさせ、9周を走って1分43.3まで、約1秒タイムを落としています。つまり、1周あたりのデグラデーション(タイヤの劣化による、ペースへの影響)は0.111秒という計算になります。一方、Mのロズベルグは、1分43.1秒でロングランを開始、13周で1分43.9秒までペースを落とします。つまり、メルセデスAMGのMの1周あたりのデグラデーションは、0.061秒です。

 さて、対するフェラーリはどうでしょう。フェラーリはベッテルにSを、ライコネンにMを履かせてロングランを実施しました。まずSのベッテルは、1分42.7秒でロングランをスタートさせ、14周走って1分44.1秒までタイムを落としました。つまり、デグラデーションは1周あたり0.1秒です。Mのライコネンの方は、1分42.8秒でロングランを開始し、18周で1分43.8秒までタイムを落としました。こちらのデグラデーションは0.05秒/周です。

 ここまで見てみると、フェラーリの方が若干タイヤを長く使うことができるものの、今回は両者にそれほど大きな差ではないように見えます。しかも、Sを装着した際のロングランは、メルセデスAMGの方が0.5秒程度速いペースでした。以上を総合的に判断すると、今回も接近戦にはなりそうですが、一発の速さに勝るメルセデスAMGが有利、と結論付けることができます。

 ただ、ひとつ気になることがあります。それは、フリー走行2回目の、ベッテルのペースです。デグラデーションの値、そしてハミルトンからは劣るペースであったというのは前述の通りですが、Sを履いていたにも関わらず、Mのライコネンとほぼ同じペースだったのです。これが何を意味するのか。どこかで他車に引っかかったか、Sのグリップの美味しいところを使い切れていないか、または燃料を多めに積んでいたためにペースが上がらなかったか……もしくは同じ条件になればもっとペースは上がるのか……など、悪い方と良い方、両方の可能性を考えることができます。ただ、その答えが後者だった場合、SはMよりも1~2秒/周速いと見られていて、それを換算すると、メルセデスAMGのペースを凌いでしまうことになります。さて、その真相は?

 トップ2チームは、今回もメルセデスAMGとフェラーリになるのは間違いありません。この上海で次に来るのは、レッドブルのダニエル・リカルドのようです。リカルドはフリー走行2回目でMによるロングランを実施し、ロズベルグやライコネンからわずかに劣るペースで走行していました。ここまでの2戦から比べると、これは大躍進とも言えるペース。しっかりと完走することができれば、入賞圏内は間違いないでしょう。

 その次を争うのが、バルテリ・ボッタス(ウイリアムズ)とマーカス・エリクソン(ザウバー)です。特にエリクソンは、Sでのペースが安定し、デグラデーションも小さそうです。一方ボッタスのウイリアムズは今回もデグラデーションが大きく、苦しい戦いになるかもしれません。また、ボッタスのチームメイトであるフェリペ・マッサは、フリー走行で再三にわたり不可解な挙動を見せ、最終的にはクラッシュしてしまっています。ウイリアムズは何らかの大きな問題を抱えているのか、大いに心配されるところです。

 ここに加わるかどうか……というポジションにいるのが、ロータスの特にロマン・グロージャンの方です。グロージャンのSでのペースは、当初非常に高いレベルでした。デグラデーションが非常に大きかったので、上位に食い込んでくるのは難しいでしょうが、それでも、ウイリアムズとザウバーの後ろにはいるでしょう。

 そして、マクラーレン・ホンダはこれまでの順位よりも大きくパフォーマンスを上げ、中位に近づいてきました。ジェンソン・バトンとフェルナンド・アロンソのフリー走行2回目の走りは、フォース・インディアの2台、そしてロータスのパストール・マルドナドよりは良い内容だったと言えると思います(フォース・インディアのニコ・ニュルケンベルグには、Mによる“不可解な”ほど速いラップが5周あるのですが……)。ザウバーやウイリアムズからは大きく遅れているので、コース上での入賞争いまではなかなか難しいでしょうが、上位に脱落などがあれば、今季初入賞のチャンスが回ってきても、おかしくはありません。そのくらい、今回も着実に進歩しているのが見て取れます。

 フォース・インディアは、このマクラーレン・ホンダから1秒程度遅れた位置。彼らは非常に苦しんでいて、ライバルと戦うには、Bスペックマシンが登場すると言われる8戦目以降……ということになりそうです。

 2015年シーズンの第3戦中国GP。ロングランは“ほぼ”互角、しかしトップ争いは若干メルセデスAMGに分があるように見えます。しかし、フェラーリもまだ速さを隠し持っていそうな雰囲気。ベッテルのSでのロングランは不可解です。さて、その真相は? いずれにしても、見応えのあるレースになりそうです。
(F1速報)