政府は4月3日、いわゆる「残業代ゼロ制度」を含む労働基準法の改正案を閣議決定した。残業代が発生しない制度が導入可能とされているのは、金融商品のディーラーやアナリスト、コンサルタント、研究開発業務従事者。年収要件は1075万円以上だ。
この改正法案には、労働組合などから「働きすぎを助長する」と反対する声明が発表される一方で、経済団体からは法案成立前にもかかわらず、早くも職種や年収などの要件について緩和を要望する意見が飛び出している。
「ストックオプション付与」など理由に
大手企業1300社あまりが加盟する経団連の榊原定征会長は6日の記者会見で、「(制度を)実効性あるものにするには、(1075万円以上の)年収要件を緩和し、対象職種も広げないといけない」とコメントした。
現在の年収要件では「極めて限定された社員からスタートになる」と不満を表し、労基法の規制緩和が適用される対象を、より多くの社員に広げるべきという考えを示した。
経済団体の新経済連盟は、代表理事を務める楽天・三木谷浩史会長の名義で「知識社会での地球時間の働き方を目指して」と題したコメントを発表した。
閣議決定された労基法改正案については「多様で柔軟な働き方を認めていくうえで一歩前進」と評しつつ、「経済構造は、知識集約型にシフトし、時間ではなく成果が求められるようにますますなってきています」と指摘。
特にベンチャー企業の場合、「多くの従業員が企画型の業務を行い、ストックオプションをもらっていることも多く将来的リターンも大きい」こともあり、
「健康管理の枠組みを担保しつつ労働時間制度を適用除外することを引き続き検討していくべき」
と主張。職種や年収にかかわらず、規制緩和の対象をベンチャー企業の従業員全体に広げるべきという意向を示した。
なお、提言型ニュースサイトのBLOGOSでは、「新経済連盟が『ベンチャーは労働時間制度の適用から除外を』とコメント…どう思う?」というコーナーを設けて4月7日から意見を募集している。
コメント欄には「選択的に多様な就労形態はあるべき」という意見がある一方で、ベンチャー企業の管理職から「全く持って論外」「初期ITベンチャー企業の体育会系の余波で、日本の開発現場が全般的に遅れをとってることを自覚していただきたい」という強い批判の声もある。
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