2015年04月08日 17:22 弁護士ドットコム
小学校6年生の男児が蹴ったボールをよけようとして転倒し、後に死亡した男性(80代)の遺族が、男児とその両親に損害賠償を求めた裁判の判決が明日4月9日、最高裁判所で言い渡される。学校での子どもの行動について、親がどこまで責任を負うべきなのか、最高裁の判断に注目が集まっている。
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事故が起きたのは、11年前の2004年2月。報道によれば、愛媛県今治市内の小学校の校庭で、放課後にサッカーをしていた少年がゴールに向けて蹴ったところ、ゴールの後方にあった門扉(高さ1.3メートル)とフェンス、外側の溝(幅約2メートル)をこえて、ボールが道路に転がり出てしまった。
ちょうどその道路をオートバイで通りかかった男性が、転倒して足を骨折。直後に痴呆の症状が出ると、事故から約1年半後に肺炎で死亡した。そこで、男性の遺族は約5000万円の損害賠償を求め、提訴したのだ。
1審と2審はいずれも少年の過失を認めた上で、1審では約1500万円、2審では約1100万円の賠償を支払うよう両親に命じた。その際、両親が少年の監督義務を怠っていたと認定されたことが、大きなポイントとなっている。
2審では少年側が「校庭でボールを使って遊ぶのは自然なこと」と主張したが、判決は「蹴り方しだいでボールが道路に飛び出し、事故が起きることを予見できた」と過失を認定している。また、事故と男性の死亡との因果関係も認められている。
この裁判で、最高裁第一小法廷は3月19日、当事者双方の意見を聞く弁論を開いた。「一般的な家庭と同程度に危険な遊びをしないよう指導するなど監督義務を果たしていた」と主張する少年の両親に対して、男性の遺族は「周囲に危険を及ぼさないよう少年を指導する義務があった」と反論している。
最高裁では、2審の判断を変更する際に弁論を開くのが慣例だ。そのため、両親の監督義務違反を認めて賠償を命じた2審判決が、見直される可能性もあるとみられている。
判決前の4月7日、被告の両親の代理人を務める大石武宏弁護士は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「親の監督責任について、真正面からの判断があるのか、現時点では判断がつきませんが、最高裁が(1、2審と異なる)新しい判断を示す可能性もあると考えています」と話した。
「この裁判では、親は放課後の学校の校庭においても、子どもを監視下に置いていなければいけないのかが問われています。しかし、1、2審の判決では、親の監督責任について、ほとんど触れられていないと考えています。
1、2審をおおげさに解釈すれば、『常に子どもを監督下に置くのか』『外でのボール遊びを禁止するのか』、あるいは、『全面的に賠償せよ』との選択を突きつけられたようなものです。
法律は両親に対して、どのような監督を求めているのか。また、どのような監督をしたら(事故を)回避できると考えているのか等の点についても、真正面から判断を示してほしいと考えています」
(弁護士ドットコムニュース)