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女子高生と「援助交際」した会社員が逮捕・・・「補導」された少女はどうなるの?

2015年04月07日 13:41  弁護士ドットコム

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18歳未満と知りながら、女子高生(当時16)に約2万円を渡して、いかがわしい行為をしたとして、会社員の男(33)が児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで、長野県警に逮捕された。今年1月のことだ。


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逮捕のきっかけは、昨年10月下旬の長野県警によるサイバーパトロール。スマホの出会い系アプリでその女子生徒の書き込みを発見し、少女を「補導」したところ、男の買春行為が判明したのだという。



この事例のように、「補導」された少女から得た情報や証拠にもとづいて、成人男性が児童買春などの容疑で逮捕されることは珍しくない。いわゆる「援助交際」が警察に摘発されるときの典型的なパターンだ。



いったい「補導」とは、どんな制度なのか。また、大人が逮捕されるような少女買春事件では、当事者でもある少女が罪に問われることはないのだろうか。元警察官僚で警視庁刑事の経験もある澤井康生弁護士に聞いた。



●「不良」と「非行」は明確に区別される


「補導とは、飲酒、深夜はいかい、不健全性的行為等をしている『不良行為少年(少女)』に対して、事情聴取したうえで適切な注意・助言をし、必要に応じて保護者等に連絡するなどの方法により、非行防止を図る警察活動のことをいいます。



なお、『不良行為少年』は別に犯罪を犯したわけではないので、いわゆる『非行少年』とは明確に区別されます」



では、補導された場合、その後はどんな手続きをたどるのだろうか。



「補導はあくまで『不良行為少年』の非行防止を図るための任意の警察活動です。そのため、逮捕や家宅捜索はありませんし、家庭裁判所や少年院に送られることもありません。そもそも『不良行為少年』は、犯罪を犯したのではないからです」



なんらかの理由で補導された少女が持っていた「携帯電話」のメールやLINEなどの履歴から、買春をした男が警察に検挙されるケースもある。事情聴取の際には、持ち物も検査されるのだろうか。



「児童買春などの犯罪では補導された少女は、あくまで『被害者』ということになります。ですから、被疑者(容疑者)として携帯のデータを強制的に提出させられることはありません。通常は、補導として事情聴取を行う中で、任意に提出してもらうことになります」



●児童買春で「少女」は保護されるべき「被害者」


児童買春事件では、大人は逮捕されるが、少女らは法的な罰を受けることはないのか。



「少女が罰を受けることはありません。児童買春などの福祉犯罪において、少女はあくまで『被害者』として保護されるべき客体として位置づけられています。そのため、児童買春では、大人は逮捕されるのに対して、少女は補導にとどまります」



子どもたちが「補導」されているのに、親や学校が把握できずにいる可能性はないだろうか。



「少年警察活動規則や警察庁通達では、必要に応じて、まず保護者に連絡する。また、学校に連絡することが特に必要であると認めるときは、学校にも連絡するものとされています。



したがって、不良行為の種別態様によっては、現場限りの措置で終わることもあれば、保護者や学校にも連絡されることがあります。深夜はいかい程度であれば、現場限りの措置で済むはずですが、児童買春の場合は、少なくとも保護者には連絡されるケースが多いのではないかと思われます」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も兼任、その他テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。東京、大阪に拠点を有する弁護士法人海星事務所のパートナー。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:弁護士法人海星事務所
事務所URL:http://www.kaisei-gr.jp/