今季からスーパーGTのサポートレースとして開催される新たなステップアップフォーミュラ、FIA-F4 ジャパニーズ・チャンピオンシップが岡山国際サーキットでついに開幕した。4月4日(土)に予選と第1戦を、5日(日)に第2戦を行い第1戦はドライ、第2戦はウエットとコンディションは異なったものの、いずれも逆転で優勝を飾ったのは牧野任祐(DODIE・インプローブス・RN-S)だった。
■多くのエントリーを集めた記念すべき開幕戦
新たな入門フォーミュラとして、そして全戦がスーパーGT国内ラウンドのサポートレースとして開催されることで、国内外から最も熱い視線が注がれているのがこのFIA-F4。国内から磨けば光る原石たちが大集結し、なんと海外からのエントリーも。開幕ラウンドのグリッドには28台が並ぶこととなった。それでも4台がエントリーを取り消しているのだが、十分に壮観であるばかりか、オーダーそのものは40台を越したという。すべて集まった時は、昨今のどんなフォーミュラカテゴリーでも見られぬ光景だけに、きっと息を飲むに違いない。
大本命の呼び声が高いのは、昨年のスーパーFJ日本一決定戦ウイナーの牧野。レースウイークは早い者で月曜日から岡山に入り練習を開始し、大量の周回が重ねられてきたが、その最終調整ともなる金曜日の専有走行において、ドライ、ウエットの両方でトップタイムを記していたのも牧野だった。
「どっちも、というのは自分でもすごく自信になりますよね。絶対に最初のウイナーとして名を刻んでみせます」と語っていたのだが、ウエットの予選でいざ蓋を開けてみると、第1戦のグリッドを決めるファーストベストタイムでも、第2戦のグリッドを決めるセカンドベストタイムでも牧野がトップではなく、なんと6番手と5番手に留まっていた。
「タイヤの内圧調整に失敗したのと、ガソリンの量を攻めたら最後ガス欠になっちゃって。路面がどんどん良くなっていくのは分かっていたんですけど……」と不満そう。第1戦のポールポジションは坪井翔(FTRSスカラシップF4)が獲得し、これに続いたのは5年ぶりのレース参戦となる銘苅翼(MediaDo Kageyama F110)。その後方には川端伸太朗(SCCEED SPORTS F110)、山田真之亮(B-MAX Racing F110)、川端瑞基(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)といった、知る人ぞ知る蒼々たる若手の顔ぶれが連なり、さすがの牧野も苦戦は免れないものと思われた。
「最初のポールが獲れて嬉しいです。どんどんコンディションが良くなるのは分かっていたので、ピークを後半にもっていったんですが、うまくクリアが取れなくて。その中でようやくクリアが取れた周にタイムが出せて、もう1周行ければセカンドベストでもトップだったはず」と坪井。
■第1戦から白熱の戦い。牧野が最初のウイナーに
4日の第1戦の決勝が近づくと、路面はすっかり乾いて全車がニュータイヤを投入する。そのスタートをポール坪井以上に決めたのが川端だったが、銘苅との牽制し合いでやや失速。川端以上にスタートを決めた牧野がふたりの脇を抜けて、坪井に早々と続くこととなる。いきなり激しいトップ争いが繰り広げられるが、2周目のダブルヘアピンで3台が絡むアクシデントが起き、回収のためのセーフティカーランは5周も続くことになった。
バトル再開後は山田と川端も引き連れることとなり、牧野と川端のチャージが活発に。先に動いたのは牧野で、11周目のヘアピンで坪井のインを差し待望のトップに立つと、そのまま逃げていった。この流れに乗ろうと、12周目のダブルヘアピンで襲いかかった川端は、山田を押し出してしまう格好に。この行為に対して45秒加算のペナルティを受けた川端は15位に降格。繰り上がって平木湧也(GSR初音ミクホリデー車検F110)が3位を獲得した。
「最高です! スタートが『過去イチ』と言えるくらい決まって、自分でもビックリしました。SCが長くてこのまま終わっちゃうんじゃないかと思ったり、坪井選手のガードが固かったんですけど、逆転できて良かったです」と牧野。
■首位が次々コースオフ。牧野が連勝飾る
開けて日曜日に行われた第2戦のポールは、銘苅が獲得。「ウエットの方が調子が良かったので、セカンドベストでポールが決まったのは、僕にとって恵みの雨になるかもしれません」と語っていたのだが。2番手には川端、3番手に山田、4番手に坪井、そして5番手が牧野、6番手が平井と、第1戦の上位と代わらぬ顔ぶれとなっていた。
その決勝は銘苅の思惑どおりウエットコンディションとなり、SCスタートで開始されることになった。2周の先導の後、最終コーナーを立ち上がった銘苅はアクセルの踏み込みが早過ぎたのか、痛恨のスピン! 接触を回避したつもりだったという川端は、実際には接触しており、足まわりにダメージが。トップで1コーナーに飛び込むが、ブレーキング直後に姿勢を乱してコースアウトしてしまう。
山田、坪井、牧野の順となり、まず牧野はアトウッドで坪井をパス。プレッシャーに圧されたわけではあるまいが、ヘアピンで山田がコースアウトし、牧野は労せずしてトップに躍り出ることとなった。1周戻ってくると、坪井との差は3秒に。そのままアクセルを緩めず攻め続け、9周目に10秒差とすると、そこからはペースをコントロールする余裕さえみせていた。序盤の混乱を巧みに回避し、3番手に上がっていたのは大津弘樹(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)。実に12番手からの躍進で、坪井に迫ることは許されなかったが、しっかりとポジションをキープした。
「こうなったら目標は全勝です。次の富士もスーパーFJで2回出て、両方とも勝っていますから不安はないですし。もしどこかで負けても、それがなかったら大きいところで負けていたかもしれないし、また成長にもつながりますから。去年のスーパーFJでも1回だけ負けているんです」と牧野。早くも出た『全勝宣言』。“怪物くん”の成長ぶりに注目していきたいところだ。
(はた☆なおゆき)