この連載を開始して、ちょうど1年。私が「ブラック企業」呼ばれるワタミにいたことは、すでに周知のことかと思います。「ワタミにいた」と他人に話すと、「えっ!あのワタミ?!」「ブラックブラックって言われてるけど、実際どうなの?」と言われます。
確かに厳しいことも数多くありましたが、同時に何かしら学んだことがあるのも事実です。これまでは問題提起を重ねて来ましたが、ここからは少し善悪の判断を留保して「サラリーマンとして生きること」について分かったことも書いてみます。(文:ナイン)
「絶対出世しない」と思った人に追い抜かれ
ワタミに入社すると、毎日のように上司や先輩から「いつ店長になるの?」と言われました。ワタミでは「店長になって一人前」といった風潮があったからです。
しかし肝心の人事評価は、公平さを疑いたくなるものでした。仕事を覚えるのに夢中だった入社1年目には感じませんでしたが、年数を重ねてくると「なぜこの人が店長になるの?」と選んだ上司に聞きたくなる人も見えてきました。
そういう人たちは、総じて「仕事ができない人」でした。皆さんの周りにもいるのではないでしょうか。一見すると頼りない印象で、部下からも何となく不安がられる人です。
ワタミでいえば、簡単な調理マニュアルの内容も把握していなかったり、仕事に抜け漏れがあったりする人です。私はそんな人を見て「大丈夫かよ、この人」「絶対こいつは出世しないな」と思っていました。
ですが、フタを開けてみると、そういう人が私より先に出世していたのです。私もはじめは「何で俺じゃなくて、あいつなんだ! 俺のほうが仕事はできるのに!」と納得がいかず、腐っていた時期もありました。
ただ、少し視点を変えてみると、気が付いたことがありました。仕事ができないのに出世する人たちを見ていると、彼らは「周りから可愛がられる人」だったのです。
仕事力より「人間的な魅力」がカギ握るとしたら…
皆さんの周りにも、ミスをしてもどこか憎めない人、いつも笑顔で愛嬌のある人はいませんか。「仕事力」はないけれど人間的に魅力があり、コミュニケーションがうまい。だから周りに敵がいなく、出世していくのだと思いました。
そもそも上司の考える出世の基準は、仕事の出来不出来よりも「人間としての魅力やコミュニケーション能力」に重きを置いていたとしたら、どうでしょうか。
そう考えると、私は仕事ができないのに出世した人と比べて、「こいつは人間的な力が劣っている」と思われたのかもしれません。少なくとも私は、可愛がられるタイプではありませんでしたから。
出世の基準は業務内容や社風などの要素もあるので一概には言えませんが、組織で働く上で、可愛がられる人になっておいて損はないと思います。少なくとも感情を持ち、ストレスを抱く上司が部下の出世を決める以上、そういう人が重用されるのは、ある意味で当然の話なのです。
ときにはイエスマンやお世辞を言える人が、出世していくように見えることもあるでしょう。しかし、その環境に嘆いていても仕方ありません。そういった環境だと知った上で仕事をしていくことも大切かな、なんて思いました。
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